澁谷 司

アジア太平洋交流学会会長・目白大学大学院講師

澁谷 司

(しぶや・つかさ)1953年、東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学などで非常勤講師を歴任。2004年夏~05年夏にかけて台湾の明道管理学院(現・明道大学)で教鞭をとる。11年4月~14年3月まで拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。20年3月まで、拓殖大学海外事情研究所教授。著書に『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)、『2017年から始まる! 「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)など。

2年前、中国では不動産危機が吹き荒れた。その余波で金融システム崩壊が迫り、中国経済全体が暗澹たる状況に陥るなか、習近平政権はそれを座視できなくなっている。だが、不動産、地方政府債務、金融の危機の連鎖に対して、北京が解決を図るのは難しいのではないか(*1)。

中国共産党の李強総理は今年5月21日、「システミックな金融リスクを発生させないという底力を堅持せよ」と要求した。

中国系米国人エコノミスト、李恒青は、最近、何立峰副首相が(1)不動産、(2)地方政府債務、(3)中小金融機関の"3大リスク"に言及したと指摘しているが、その核心はやはり不動産だという。

(*1)2024年6月2日付『万維ビデオ』

不動産危機が政府財政にも波及

近頃、北京が発表した公式の数字によれば、今年1~4月、中国全体の税収は前年同期比4.9ポイント減少した。特に、不動産関連の土地使用権からの収入は1兆536億元で、前年同期比10.4ポイント減少している。

そして、財政の豊かな上海市を除き、財政の厳しい他の30省・市は、中央政府からの財政調整交付金(日本の地方交付金に相当)をあてにしている。上海では世界的サプライチェーンが形成されているが、目下、外国資本の撤退が続き、将来、上海の財政状況も楽観できなくなるかもしれない。