《本記事のポイント》
- ハマスは北朝鮮から地下トンネルで技術支援を受けている
- ウクライナ戦争によって息を吹き返した北朝鮮
- ウクライナ戦争後に急激に増えたミサイル発射回数
河田 成治
(かわだ・せいじ)1967年、岐阜県生まれ。防衛大学校を卒業後、航空自衛隊にパイロットとして従事。現在は、ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)の未来創造学部で、安全保障や国際政治学を教えている。
韓国の中央日報は5月14日、韓国軍は昨年10月のイスラム原理主義組織のハマスによるイスラエル奇襲攻撃を模したシナリオを設定し、北朝鮮から韓国を防衛する陸海空軍の合同防空訓練を実施したと報じました(*1)。
同紙によると、今回の訓練はハマスがロケット弾、パラグライダーなどを使ってイスラエルを攻撃した事例と、先月4月にイランがイスラエルに対して行った無人機とミサイルによる「同時攻撃」を反映したもののようで、訓練では約800のミサイルや無人機が飛翔するとの想定の中、韓国軍がこれを迎撃する形で行われたようです。
今回の訓練は過去最大規模で行われ、空軍戦闘機や地対空ミサイル防衛システム、海軍のイージス艦など全軍の防空戦力が総動員されました。
その背景にあるのは、北朝鮮の、中東における戦争への深い関与です。
ハマスやイランが行ったことは、朝鮮半島においても起き得る、とりわけ北朝鮮による奇襲攻撃を想定しなければならないという危機感が韓国側にあるものと思います。
(*1)中央日報(2024.5.14)
ハマスは北朝鮮から地下トンネルで技術支援を受けている
実際にハマスと北朝鮮はつながりがあります。ハマスの地下トンネルには北朝鮮の技術が使われており、また北朝鮮製の兵器も見つかっています。
朝鮮日報によると、情報筋の話として、「北朝鮮は非武装地帯(DMZ)に数多くのトンネルを掘って利用しているが、ハマスは北朝鮮からその技術支援を受けている」と語っています(*2)。また米国議会調査局(CRS)も、「北朝鮮は技術者を外交官に見せかけて現地に派遣し、トンネルを活用する方法をアドバイスしてきた」と報告しています。
兵器についても、イスラエル軍は昨年10月7日のハマスによる奇襲攻撃について、使われた兵器の10%は北朝鮮製だったと公式発表しています。
韓国軍の大演習は、北朝鮮の動きに対して危機感が高まっていることを示しています。現実に北朝鮮は、ハマスやイランのように無人機や巡航ミサイル、弾道ミサイルなど多様な兵器を総動員してソウル方面を攻撃してくることが危惧されます。
(*2)朝鮮日報(2023.10.11)
HSU未来創造学部では、仏法真理と神の正義を柱としつつ、今回の世界情勢などの生きた専門知識を授業で学び、「国際政治のあるべき姿」への視点を養っています。詳しくはこちらをご覧ください(未来創造学部ホームページ )。