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アジア太平洋交流学会会長・目白大学大学院講師

澁谷 司

(しぶや・つかさ)1953年、東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学などで非常勤講師を歴任。2004年夏~05年夏にかけて台湾の明道管理学院(現・明道大学)で教鞭をとる。11年4月~14年3月まで拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。20年3月まで、拓殖大学海外事情研究所教授。著書に『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)、『2017年から始まる! 「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)など。

中国の習近平主席は5月5日から10日にかけて、欧州のフランス、セルビア、ハンガリーを訪問した。この3カ国はEUの中でも特異で、いずれも「親中派」である(*1)。特に、セルビア、ハンガリーは、中国の「一帯一路」に参加している(*2)。

習主席が最初に訪れたのはフランス・パリで、国賓として招かれた。到着翌日、エリゼ宮殿でマクロン仏大統領、フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長と3者会談を行った。

会談では、まず貿易と「公正な競争」の確保方法について話し合い、その後、現在進行中であるウクライナと中東での戦争について意見を交換した(*3)。

(*1)2024年5月5日付『万維読者網』
(*2)2024年5月4日付『中華人民共和国中央政府』
(*3)2024年5月6日付『地球大観』

交錯する両国の思惑

マクロン大統領は(仏産を含む)欧州産ブランデーに対する中国の"反ダンピング調査"や、フランスの化粧品などをめぐる中仏の紛争に懸念を表明した。フォン・デア・ライエン委員長は「EUと中国はお互い良好な関係を望んでいるが、両者間は国家主導の『過剰生産能力』、不公平な市場アクセスなど、課題にも直面している」と述べた。

対する習主席は、中国の新エネルギー産業は"自由な競争"の中で技術開発しており、「過剰生産能力」は存在せず、両者は経済・貿易摩擦に適切に対処すべきだと強調した。

しかしフォン・デア・ライエン委員長は、中国の電気自動車と鉄鋼が「欧州市場に氾濫している」と指摘し、EUは「経済を守るため難しい決断を下す用意がある」と伝えた。昨年10月、EUは中国の欧州向けEV輸出に対する補助金調査を開始し、近い将来、暫定的な関税引き上げ措置を導入する公算が大きい。

各地の紛争についても協議されたが、マクロン大統領はかねてより習主席に、「ウクライナ戦争終結に貢献する」ようモスクワに対し"影響力"の行使を求めていた。昨年、マクロン大統領は習主席に対し「ロシアに正気を取り戻す」よう呼びかけの要請を行っている。だが、北京がその呼びかけに応じた様子はない。

今夏、「パリ五輪」が開催される。マクロン大統領は大会期間中だけでも、習主席にその"影響力"で「外交的平和の瞬間」を達成して欲しいと願っている。同時に大統領は、主席がウクライナ戦争でプーチン大統領を支援するのではないかとも心配している。

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