《ニュース》
香港政府トップの李家超(ジョン・リー)行政長官は1月30日、反体制活動を取り締まる「国家安全条例」の制定作業を開始すると発表しました。本条例の制定により、香港の統制は一段と強化されることになります。
《詳細》
この条例は、中国主導で制定され、2020年に香港で施行された「国家安全維持法(国安法)」を補完するものです。
国安法は、国家の分裂や中央政府の転覆、テロ活動、外国勢力との結託など、国家を脅かす行為を禁じています。国家安全条例には、国安法がカバーしきれていない内容が含まれます。特に「外国スパイ」と「フェイクニュース」に焦点を当てているようで、国家反逆、反乱、国家機密の窃盗とスパイ行為、外国勢力の介入への協力、国家安全を脅かすデジタル活動や破壊行為を禁じます。
取り締まり対象となるスパイ行為は、現行の法規より解釈が拡大されますし、SNSなどでの情報発信を想定した「コンピューターの不正使用」も犯罪と明記される見込みです(ただし詳細は不明)。
李氏は記者会見で、「これは人々に我々を攻撃しないよう伝える法律であり、ある意味、防衛法だ。外国工作員や香港独立支持者らは今もこの地に潜んでいる。悪口や政治的攻撃は今後も続くだろう。だからこそ私は政府が全力をあげてここで何をしているのかをはっきりと説明することを望んでいる」と述べました。
同氏は、香港で起きた2019年の大規模な抗議活動を「香港版カラー革命(*)」と呼び、"国家安全保障"を守る必要性を強調。また、米中央情報局(CIA)などの米英情報機関について言及しながら、多くの国には国家安全保障に関する法律があると指摘しました。
(*)民主化運動の意味。
条例が制定されれば、香港住民だけでなく、メディアや、外国人、外国組織、外資企業といった外国勢力が萎縮することにつながると考えられ、香港の世界的な金融センターとしての地位に影響が出る恐れがあると指摘されています。
香港政府のウェブサイトには、110ページに及ぶ条例文書が掲載されています。2月末まで市民からの意見募集が行われ、その後、ほぼ親中派で占められている立法会で、草案が審議される予定です。
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