2024年2月号記事

幸福実現党 党首

釈量子の志士奮迅

第131回

釈党首

幸福実現党 党首

釈 量子

(しゃく・りょうこ) 1969年、東京都生まれ。國學院大學文学部史学科卒。大手企業勤務を経て、幸福の科学に入局。本誌編集部、常務理事などを歴任。2013年7月から現職。
釈量子のブログはこちらでご覧になれます。
https://shaku-ryoko.net/

政治の主戦場は「霊的戦争(Spiritual Warfare)」に

2024年は、全世界76カ国で選挙が行われます。その中でも世界の趨勢を左右するのが、11月の米大統領選です。

アメリカでいま繰り広げられているのは、「価値観の戦い」です。妊娠中絶や公立学校における祈りの是非、進化論教育、移民政策、そしてLGBT教育などをめぐって国を二分する論争が起きています。

アメリカで起こる"霊的戦争"

このような「Political War(政治的な戦い)」は、別の側面からは「Culture War(文化的な戦い)」と呼ばれることもあります。例えばディズニーの制作する実写版映画において、ヒロインにマイノリティを起用することの是非などは、日本でもよく話題になっています。

このカルチャー・ウォーは、冷戦期の「Ideological Warfare(イデオロギー〈思想〉的な戦争)」という言葉で表現されることもあります。2023年4月にウォール・ストリート・ジャーナルが行った世論調査によれば、共和党支持者たちは、メディケアや社会保障の問題よりも、「学校や企業における"woke"(目覚めた)イデオロギーと闘うことの方が重要だ」と答えています。

「woke」とは、主に人種やジェンダーの問題を認識して活動するという文脈で使われ、リベラルに対する保守層の皮肉が込められています。LGBTに批判的な言動を取ったら退学や退職に追い込まれる、異教徒に配慮してクリスマスを祝うことも許されない、そうした唯物論・無神論を是とする共産主義が広がりつつあることへの抵抗感が込められているのです。

そしてこうした状況下で、最近、使われるようになったのが、「Spiritual Warfare(霊的戦争)」という言葉です。主に共和党のトランプ氏を強力に支持するキリスト教福音派の人々は「トランプの挑戦は国家の霊的戦争を浮き彫りにする」という認識を持っています(*1)。

また、トランプ政権下で大統領補佐官を務めたスティーブ・バノン氏は「ドナルド・トランプは神の摂理の道具である……これは霊的戦いだ」といった発言をしています(*2)。

敬虔な信仰者であるトランプ氏再選への期待が高まっている背景にあるのは、経済や外交の奥に潜む「霊的」な危機感です。ニューヨーク在住の幸福実現党の党員は、「今のアメリカの状況は、旧約聖書の『ソドムとゴモラそのものだ』と嘆く声にあふれている」と言います。

政治や思想の戦いを超え、「神対悪魔の戦い」が行われている認識を持つアメリカ人が増えていると言ってもよいでしょう。このアメリカの「霊的戦争」に、世界が注視しています。

(*1)2023年6月5日付NEWS MAX
(*2)NPO団体「Turning Point Action」主催の講演での発言

「チーフ・エクソシスト(主席悪魔祓い師)」
に任命されたプーチン大統領

ロシアでは、最高裁判所が2023年11月30日、「国際的なLGBT市民運動」を"過激派組織"と見なし、ロシア国内での活動を禁止しました。ロシアの伝統的な家族観や人間観を破壊するという危険性を認識しての施策です。

プーチン露大統領は、国民から宗教家的なリーダーシップをも期待される政治家であり、2022年にロシア正教会から「チーフ・エクソシスト(主席悪魔祓い師)」に任命されています。価値観の戦いは、霊的領域にも踏み込んでいるのです。

一方、日本で起きているのは、価値判断から逃げた「なあなあの妥協」です。象徴的だったのは、出版大手KADOKAWAが、1月に発売予定だった翻訳書を発売中止としたことです。

アメリカのジャーナリスト、アビゲイル・シュライアー氏の『取り返しのつかないダメージ:娘たちを誘惑するトランスジェンダーの熱狂』(*3)は、2020年にアメリカでベストセラーとなり、全世界10カ国に翻訳された話題の書です。日本でも発刊の予定でしたが、日本共産党がSNSで「♯ヘイト本出すな」等のキャンペーンを張り、発刊が取りやめとなりました。シュライアー氏は「活動家主導のキャンペーンに屈すれば、検閲の力を助長する」とKADOKAWAの対応を批判しています。

(*3)英語原題は『Irreversible Damage: The Transgender Craze Seducing Our Daughters』

普遍的な神への信仰が共産主義を破る

日本の限界は、まさにここにあります。岸田首相が戦時下のウクライナを訪問した際に「しゃもじ」を贈呈しましたが、「御利益」で動く日本の政治を象徴するようで恥ずかしいことでした。

教えのない日本神道や、妖怪や天狗も神とする信仰観では、唯物論の共産主義の広がりを押し止めることはできません。人間の尊厳を守り抜くには、普遍の価値観を教える神への信仰が必要です。

LGBTなど人間観に深く関わる問題には、「人間はどのような存在か」「神はなぜ男女を分けてつくられたのか」という宗教的視点から探究しなくては、答えを出すことはできません。

神仏の心を心とし、霊的な価値観の戦いを粘り強く続けてまいります。