2023年11月号記事

元韓国国防省・北朝鮮分析官が語る

インテリジェンスの常識

日本国内にも北の特殊工作員がいる

韓国国防省で北朝鮮分析官を務めていた高永喆氏に、国防に不可欠なインテリジェンス(情報・諜報機能)を聞いた。

高永喆

元韓国国防省北朝鮮分析官

高永喆

(コウ・ヨンチョル)1975年、海軍将校任官、海軍大学卒業。米国防総省DIA傘下の情報学校修了。駆逐艦作戦官を経て第2艦隊特海高速艇隊長、済州道防衛司令部情報参謀、海軍士官学、国立海洋大学教官を歴任。1989年からは、国防省北朝鮮分析官、同日本担当官(防衛交流)を務める。1993年、金泳三政権の軍部叩きにより、全斗煥、盧泰愚の元大統領らとともに拘束。その後、金大中大統領の特別赦免・復権を受ける。1999年に来日。現在は拓殖大学客員教授。共著に佐藤優氏との『韓国左派の陰謀と北朝鮮の擾乱』(ベストセラーズ)、『国家情報戦略』(講談社)などがある。

──韓国国防省では北朝鮮分析官として、米国家安全保障局(NSA)による通信情報や米国防情報局(DIA)による衛星情報などを多角的に分析され、国防省長官と大統領府に報告をされていました。安全保障に関わる判断に不可欠な「インテリジェンス」の常識をお聞かせください。

高永喆氏(以下、高): 情報員の身分は大きく分けて二つ、ホワイトメンバーとブラックメンバーがあります。前者は外交官の肩書で各国に赴任し情報を集める。

在韓米国大使館の中には三等書記官、二等書記官、一等書記官、その上に参事官、公使と大使以下の役職があります。大使を社長とすると、公使は副社長のようなもの。5、6人の公使が大使館に在職していますが、半分ほどは米中央情報局(CIA)から派遣されていると言われています。

こうした外交官としての肩書を持つ人とは異なり、身分を"洗濯"して潜入するブラックメンバーもいます。会社員や新聞記者、あるいは留学生になりすまして情報活動をする人々です。

この分野で特に優れているのが、イスラエルの諜報機関・モサドや旧ソビエトのKGB、現ロシアのGRUだとされます。もちろんCIAもそうした活動を行っています。