2023年9月号記事

あなたは葬儀で死を悟る

お墓と葬式はなぜ省けないのか

「お盆」に考えたい、故人供養の本当の意味。
家族に"いざと言うこと"があった時の、判断材料にもなるだろう。


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事件は火葬場で起きた。

火葬炉の二重扉が閉じられると、中から送風機とガスバーナーの重い作動音がうなった。病死した河田光枝さん(仮名)の焼骨が、しめやかに行われていたところだった。

「あづいぃー! あづいぃー!」

うめくような声が響き渡った。

炉の中からではない。親族の一人である若い女性が、顔を真っ白にしてわめき始めたのだ。

「家族が憑依された」という電話を、寺院の住職・徳竹道西氏(仮名)が受けたのは、火葬に同行した後、一足先に寺に戻ってきたところだった。

「何とかしてください」と慌てる家族に、徳竹住職は「とりあえず、お寺に連れてきてください」と伝えた。

しばらくすると、問題の女性が連れられてきた。女性は髪を前に垂らし、「熱い、熱い」とうめき続ける。その表情は「のっぺらぼうのようだった」と、徳竹住職は振り返る。

葬儀より先に火葬をし……

その地域では、臨終後、ご遺体を葬儀よりも先に焼いてしまう慣習があった。その方が、火葬場の予約状況や葬儀参列者の予定調整なども柔軟にできて、好都合だった。

そうしたことなどもあってか、光枝さんが自分の死を自覚できておらず、体が焼かれたと感じて苦しんでいると、徳竹住職は直感した(*)。

女性に「あなたは光枝さんですか?」と聞くと、案の定、「うんうん」とうなずく。そしてまた「熱い」と訴えるのだった。話の顛末は本紙36ページを参照されたい。

今、葬儀やお墓の簡略化が止まらない。しかしその霊的な意味を無視し、自分たちの都合で供養を省くと、見えない世界で、悲劇が起きている可能性がある。

(*)死後、魂と肉体をつなぐ「霊子線」と呼ばれるものが切れるまで平均的にだいたい24時間かかる。その前に肉体を焼いてしまうと、魂が痛みや熱さを感じて苦しむ。『霊界散歩』など参照。

※文中や注の特に断りのない『 』は、いずれも大川隆法著、幸福の科学出版刊。

 

 

次ページからのポイント

コロナが問うた「葬儀」の存在理由

故人からかかってきた涙の電話