《ニュース》
米下院司法委員会と傘下の特別小委員会が10日に公表した報告書により、米連邦捜査局(FBI)がウクライナの情報機関からの要求を受ける形で、ソーシャルメディアのアカウントに対し、検閲行為を行っていたことが明らかになりました。
《詳細》
今年2月、下院司法委員会は政府によるソーシャルメディア上での言論検閲を調査する一環として、FacebookとInstagramの親会社であるメタ社と、GoogleとYouTubeの親会社であるアルファベット社に対して召喚状を発行していました。
これらの召喚状を受けて、下院司法委員会が両企業から入手した文書により、米連邦捜査局(FBI)がウクライナの情報機関から要求を受ける形で、ソーシャルメディアのアカウントについて削除要請(および指示)を重ねてきたことが明らかになりました。
報告書によれば、一連のオペレーションは「ロシアによる偽情報」に対抗するため行われたとのこと。まずウクライナ保安庁(SBU)が削除対象のアカウントを指定し、それを受けたFBIが、米ソーシャルメディア企業に対し、問題のアカウントをサイトから削除するよう要請。Facebook、YouTube、Instagram、Twitter、Googleの全てが、アカウント削除要請を受けたといいます。
例えば昨年3月、FBI特別捜査官はメタ社の社員に「追加の偽情報アカウント」と題したメールを送付。同メールに添付されたスプレッドシートには、1万5865件にのぼるInstagram上のコンテンツと、「ロシアの偽情報を拡散している」疑いのある5165のFacebookアカウントに関する詳細な登録情報が記されていたとのことです。
また、下院司法委員会による取材を受けたGoogle社員の証言によれば、コンテンツの削除要請はウクライナ政府や東ヨーロッパ諸国の政府、欧州連合(EU)、欧州委員会の情報に基づいており、FBIを統括する米司法省が、それらの検閲要求をGoogleに転送していたとのことです。
削除対象となったアカウントには米国民のものも多数含まれており、合衆国憲法修正第一条(the First Amendment)によって保障されている「言論の自由」を侵害しているとして、下院共和党から問題提起がなされています。
FBIとSBUの関係が問題視される一方、報告書からは、ウクライナ内部の"ずさん"な実態も明らかになっています。
「ロシアの偽情報に対抗するため」であれば、SBUが取り締まるべきは、「反ウクライナ・親ロシア的見解」です。しかし実際にはその真逆、つまり「親ウクライナ・反ロシア的見解」が一部、検閲されていたとのことです。
SBU(とその要求を受けたFBI)は、明らかに「親ウクライナ的な見解」や、「ロシアのプーチン大統領への反対意見」を述べるアカウントに対し、削除や凍結を繰り返し要求。時には「これらのアカウントが削除されたか」、関係企業に確認までしたといいます。このような判断がなされた背景には、ロシアの諜報員が長きにわたってウクライナ内部に浸透しており、その多くがSBU高官を占めているためだと分析されています。
SBUが削除対象としたアカウントには、Instagram上の米国務省によるロシア語公式アカウントも含まれており、なぜ同アカウントが対象になったのか、理由は説明されていないとのことです。
《どう見るか》