2023年5月5日、米南部テキサス州エルパソの国境沿いに集まる移民たち。中には野営地を設けている者もいる(画像: Ruben2533 / Shutterstock.com)。

《ニュース》

米バイデン政権は、新型コロナウィルスの非常事態宣言の解除に伴い、トランプ政権時代に導入された不法越境者の送還措置「タイトル42」を11日に失効させました。

《詳細》

「タイトル42」とは、コロナの感染拡大防止を理由に、亡命申請の審査を経ずに、不法越境した者をメキシコに即時送還することを可能にするもの。

その失効を前にして、大勢の移民希望者がアメリカとメキシコの国境沿いに集結。多くの人々が法的手続きなしで国境を越え、南部テキサス州の都市などに押し寄せました。それにとどまらず、ニューヨーク州やシカゴにも押し寄せたため、同地で緊急事態宣言が出されています。

米国土安全保障省マヨルカス長官は、「タイトル42」の失効は国境の開放を意味するものではないとし、「滞在する法的根拠がないのに不法に国境を越える人々は速やかに処理され、排除される」と強調。バイデン政権は、亡命申請中の移民を強制送還しやすくするなどの新たな措置を講じるとしています。

連邦下院議会は12日、国境を超えようとする移民と違法薬物の流入阻止を目的とした国境警備法案を可決。法案は、難民申請者に厳しい制限を設け、国外でアメリカの保護を申請することを義務づけ、国境の壁建設を再開することなどを定めています。

ただこれに対してホワイトハウスは、「同法案が可決されても大統領は拒否権を発動する」とする声明を発表しています。

「タイトル42」に基づき大量の不法移民をメキシコや母国に送還する措置を解除するよう、移民保護団体や民主党議員などから強い圧力を受けているためです。

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