中国の言論統制が厳格なことは度々伝えてきたが、中国外務省が公表する定例記者会見の会見記録には、その質疑応答はほとんど掲載されず、実際にはなかった応答が追加されることもあるという。

27日付朝日新聞によると、昨年4月から今年3月までの計87回の会見では、1190の質疑応答があったものの、記録に掲載されたのは約65%の780に過ぎなかった。削除されるのは、国内で報道規制されている人権や民主化などの中国に都合の悪い問題ばかりで、例えば、「カダフィ大佐が演説で天安門事件と最近のリビア情勢を比較しているが、どう見るか」といった質問は「中国はリビアの混乱した状況をどう見るか」と修正されている。

中国には報道の自由など一切ない。それは外国人記者でも同じだ。中国当局は、都合の悪い取材をする外国人記者にはジャーナリスト・ビザを発給しない。このビザがないと、原則国内での取材はできない。また、「中国ジャスミン革命」が呼びかけられた際には、集合場所の一つとなった映画館前で日本人記者8人を含む15人以上の外国人記者らが一時拘束されている。

ところで、同日付のワシントン・ポストは、中国共産党が長い時間をかけた共産党史がようやく整理されたと報じている。同党は20年前にも公式の共産党史を出しているが、1949年の毛沢東の中国支配までで終わっているため、今回その後の歴史の「危険な領域」まで踏み込んだ。というのも、その中には、大躍進政策や文化大革命といった毛沢東の失敗だけでなく、次期最高指導者となる習近平国家副主席の父、習仲勲の全職務解任など、扱いにくい事象も含まれているからだ。

この通史の作成は、7月の共産党創設90周年に向けて、共産党と毛沢東思想を正当化するのが目的とされるが、それとは裏腹に情報統制にも思わぬ落とし穴があったか。(吉)

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中国の徹底した情報統制の落とし穴