11月8日に投開票を迎える米中間選挙は、10月半ば頃から共和党に追い風が吹いていると言われています。11月6日夜(米東海岸時間)の時点で、下院は共和党がほぼ確実に過半数を奪回すると見られ、上院は拮抗状態ですが、一部の世論調査では、共和党優勢とも伝えられています。

ただ、「民主党が有利」という世論調査もあり、州ごとの投票制度の攻防戦や世論調査に表れない層などの影響もあり、「近年で最も結果を予想できない選挙」とも言われています。

バイデン大統領は相変わらず不人気で、民主党候補者からの応援演説依頼はほとんどなく、代わりにオバマ元大統領が応援演説に呼ばれることが増えています。11月5日の夜には、ペンシルバニア州で、上院選応援のために、トランプ前大統領とバイデン氏は、別々の場所で大集会を開きましたが、民主党集会では、ゲストのオバマ氏の方が、バイデン氏よりも遥かに大きな話題となり、「オバマ対トランプ」の対決とまで言われました(11月6日付NBCニュースなど)。

アメリカでインフレが長引き、ガソリン価格の高騰が市民生活を圧迫する中、バイデン氏は10月31日、大手石油会社の余剰利益に課税することを示唆し、ガソリンの価格を下げるよう圧力を加えました。しかし、増税法案が議会を通る見込みはなく、米ニューヨーク・タイムズ紙などからも、「自身の政策の失敗の責任転嫁だ」と批判されています。

非常にルーズな無人投票箱

2020年の米大統領選挙では、無人投票箱が接戦州で民主党の強い地域に多く配置されました。日本やヨーロッパなどでは考えられないことでしょう。

こうした地域は、民主党員の選挙実務者が圧倒的に多いとされています。当時、深夜に大量の投票用紙が回収されている監視カメラの映像などが多く出回りましたが、本格的調査は入らずに終わりました。

さらに司法省はこのほど、アリゾナ州女性有権者連盟の「無人投票箱の監視は、有権者への脅迫に相当するので違法だ」という主張を支持し、アリゾナ州の選挙訴訟に介入しています(10月31日付ワシントン・ポスト)。

新型コロナウィルスの感染拡大以降、郵便投票の権利や無人投票箱の設置は大幅に拡大しました。そのため、民主党優勢州やニューヨーク・タイムズなどのリベラルメディアは、「中間選挙は、投開票日当日には結果が出ない」と主張して、共和党をけん制しています。

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画像:2020年、カリフォルニア州に設置された無人投票箱(Felipe Sanchez / Shutterstock.com)

投票制度への強い不信と二大政党離れ

有権者の多くは投票制度に強い不信感を抱いており、9月末に実施された大手世論調査で、「自分の支持政党が中間選挙で過半数の議席を獲得できなかった場合、選挙不正と疑う」と答えた有権者は、共和党支持者の39%、民主党支持者の25%に達しました(10月10日発表。アクシオス/イプソス調査)。

2020年大統領選でのバイデン氏の勝利を認めていない中間選挙の候補者は、今回の選挙の全投票用紙の6割に名を連ねています(11月6日現在。大手選挙分析サイトABC/FiveThirtyEight)。

各州で不正防止関連訴訟が起きており、その多くは共和党にとって有利に進んでいると言われていますが、未決着の案件も多く残されています。

選挙不正を疑っているのは共和党支持者だけではありません。ヒラリー・クリントン元国務長官は、「2024年の大統領選で、共和党(トランプ氏)が選挙を不正に盗もうとしている」と訴え、それを防ぐための団体への寄付をツイッターで募っています。

最近は、二大政党制に疑問を持つ有権者も増えています。共和党でも、民主党でもなく、第3の政党に期待する人が、有権者の40%に達するという調査結果も出ています(「Public Religion Research Institute」が9月に行った世論調査)。

習近平氏3期目中の台湾侵攻を警戒

中国共産党大会で発表された習近平一強の新独裁体制については、習近平総書記に忠誠を誓うイエスマンたちで固められました。米メディアの中では、経済に明るい人材が少ないことから、習氏の3期目が終わる前に、経済や情報・心理戦など軍事的手段以外の方法も含めて、中国が台湾に侵攻することを警戒する議論が増えています。

また、ドイツのショルツ首相は11月4日に中国を訪問し、習氏と会談しました。アメリカからは、ドイツの中国依存体質や安全保障を懸念する声が強くなっています。

ドイツは、メルケル首相時代に中国と経済的関係を深めてきました。具体的に言うと、100万人以上のドイツ人の仕事は、直接的または間接的に中国に依存しており、中国における全てのヨーロッパからの投資のほぼ半分がドイツからのもので、ドイツ製造業のほぼ半分がサプライチェーン上、中国に依存していると言います(10月30日付ニューヨーク・タイムズ)。

アメリカにも、民主党知事のミシガン州など、電気自動車(EV)増産のために中国のバッテリー工場を誘致する州が出てきており、中国は経済的手段を使って、個別に西側陣営を切り崩し始めているという分析もあります。

ウクライナ情勢に関しては、国民の税金を使った際限のないウクライナ支援への批判が強まっています。10月24日に、民主党の進歩派がバイデン氏に「直接ロシアと停戦交渉すべき」というレターを送り、批判を浴びて撤回しました。撤回はしたものの、民主党内でもウクライナ支援に辟易する機運が高まっているのは事実でしょう。

本年6月、バイデン氏がゼレンスキー大統領との電話会談中に、ゼレンスキー氏の過度の要求に対してつい声を荒げ、「アメリカは十分に貢献している。もっと『感謝』があってもいいはずだ」と、"キレそう"になったことが、この時期に、改めて、話題にされました(10月31日付NBCニュース)。

10月の中下旬にかけて、バイデン政権では初めて、「国家安全保障戦略(NSS)」や「国家防衛戦略(NDS)」「核体制の見直し(NPR)」などが発表され、改めて、筆頭の脅威は中国であると位置づけられました。この部分に関してはトランプ政権が発表した戦略を踏襲しています。

今月に入り、バイデン政権が非公式に、ウクライナ政権に対して「ロシアと交渉の余地があることをロシア側に示すよう」勧告していることも報道されました(11月5日付ワシントン・ポスト)。

これらの報道は、バイデン政権や主要メディアも、最大の力を注ぐべきは、対ロシアではなく、対中戦略であると気づき始めていることを反映しています。

中間選挙の結果、アメリカ政治がどのように変わっていくのか、今後も要注目です。

(米ワシントン在住 N・S)

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