《本記事のポイント》

  • 働き手が見つからないアメリカの闇
  • 早期退職を促したコロナ対策
  • 民主主義は、民主党の政策で危機に陥る

アメリカの10月の雇用統計が発表された。アメリカ労働省が4日に発表した雇用統計によると、農業分野以外の就業者は前の月と比べて26万人余り増加し、失業率は3.7%と低い水準を推移している。

予想を上回る就業者数に、中間選挙前に米民主党は「経済的成果」を誇っている。

そもそもバイデン政権は、大半の有権者がアメリカの景気の先行きを懸念している状況にもかかわらず、「景気後退」の兆しは何ら見られないという立場だ。

バイデン氏は4日、ニュー・メキシコ州アルバカーキの演説で持論をこう繰り返した。

「私たちはトランプ政権から崩壊した経済を受け継いだ。バイデン政権下で経済はよくなり、モノの値段は下がり、実質所得は上がり、ガソリンの値段は下がった!」

バイデン政権は、この50年間で最も低い「失業率」を誇るものの、統計上は、労働参加率は減少傾向にある。この状況をどう見るべきか?

働き手が見つからないアメリカの闇

結論から言えば、表面上の「数字」を信じ込むのは危険だ。アメリカで進行中の「見えない危機」に目を瞑ることになるからだ。

失業率とは、「求職中」の人たちのことである。もし人々が仕事を探さなくなったら、この分類には入らないことになる。従って「仕事をしたい」と考えている人が減少しても「失業率が低い」ということは起こり得る。

実は、アーサー・ラッファー博士が弊誌の10月号の取材で語ったように、約1000万人以上が労働人口から離れたという。

この問題を詳しく言及しているのが、米シンクタンク、アメリカン・エンタープライズ・インスティトゥート(AEI)の議長を務めるニコラス・エバーシュタット氏である。

早期退職を促したコロナ対策

エバーシュタット氏は、その著書『Men Without Work』や米ウォール・ストリート・ジャーナル紙のコラムで、こう訴えた。

「『仕事からの逃避』が起きています。これが新型コロナ対策法などの気前のよい『ばらまき』によって、アメリカの労働者全般に拡大したのです。これがかつてないほど、働かないマイナスのインセンティブをつくり出したのです。

平時において、かつてないほどアメリカでは労働需給がひっ迫しています。雇用主は、労働者に頭を下げていますが、成人した男女が『経済の外側』にいるのです。

2021年9月の労働者の日以来、農業分野以外で、平均して毎月1100万人の雇用が埋まっていません。失業者1人に対して2つの雇用があるわけです。この労働者の不足は、アメリカのどの地域にも影響を与えています」

「2020年から2021年にかけて、政府の所得移転によって、2.5兆ドルも家計所得が増え、貯蓄率が2倍になりました。これが家計を補ったり、家計を代替したりするものになりました。

コロナ対策という『宝くじ』にあたった下位6400万世帯は、約2万5千ドルも手に入れたことになります。これが55歳以上の男女の早期退職を促進させました」

仕事をしない人々の恐るべき実態

では仕事に従事しない人々は、その時間を有意義に過ごしているのだろうか?

衝撃的なのは、この仕事に従事していない人々が何に時間を充てているか、である。

エバーシュタット氏によると、55歳から64歳の男性で、就労も求職もしていない人々は、スクリーンの前で大方の時間を過ごしている。2020年の1年間で約2400時間、つまり1日あたり平均で6.5時間を、スマホなどを含めたスクリーンの前で過ごしているという調査結果も出ている。

25歳から54歳の非就労の女性は、約11.5時間を個人的な時間(多くは睡眠時間)に充てているという。

ラッファー博士は、著書『「大きな政府」は国を滅ぼす』で、この問題についてこう語る。

「働く人に課税して、働いていない人にお金を配ればどうなりますか? みんなの労働意欲が下がり、結果として、働く人がいなくなります」

「バイデン氏は、自立している勤勉な人々を、権利ばかり求める物乞いにしようとしているのです」

民主主義は、民主党の政策で危機に陥る

バイデン政権は、「ゆりかごから墓場まで」国民の面倒を見る福祉政策を行うが、それが最終的に生み出している「果実」を直視すべきだ。

それは政府に依存するだけでなく、公的な問題に無関心で政治参加の主体としては堕落した人間をつくり出す。政治家が無責任な人々をつくり出せば、いずれその民主主義は崩壊するに至るだろう。

バイデン大統領は、共和党のトランプ派への非難を強め、「民主主義は危機に瀕している」と、「民主主義の危機」を中間選挙の主要な争点に上げるが、トランプ前大統領は、「米国の労働倫理こそ、多くの米国人がかつての豊かだったこの国をつくった原動力だ」と述べ、建国時にあった労働倫理を取り戻すことの大切さを、幾度となく繰り返していた。

本来であれば付加価値を創造し、社会のお役に立っていた人々を、労働人口から脱落させて、景気後退を招いた上に「民主主義の危機の種」を播いているのは、むしろバイデン民主党政権ではないだろうか。中間選挙の結果次第で、アメリカは本格的な長期的衰退に入るかどうかが決まりそうだ。

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