《ニュース》

新疆ウイグル自治区での人権侵害を支援したとして、すでに米政府から禁輸措置などの制裁を受けている中国監視カメラ大手・杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)をめぐり、アメリカ国内におけるロビー活動の一部が明らかになりつつあります。

《詳細》

米司法省はこのほど、ハイクビジョンのロビー活動を担ってきた、アメリカに拠点を持つ多国籍法律事務所Sidley Austin(シドリー・オースティン)に対し、外国代理人登録法(FARA)に基づき登録手続きを行うよう求めました。

FARAとは、外国政府のために米政府や世論に影響を及ぼそうと試みる機関や個人に対し、米司法省への登録、活動内容や財政内容に関する情報開示を義務付けています。

さらに、ハイクビジョンのロビイストとして働いてきたとして、民主党陣営との太いパイプを持つアンドリュー・ウィルソン氏も14日、外国代理人としての登録を行ったとのことです。ウィルソン氏は、民主党院内総務(党上院トップ)などを務めた元米上院議員のハリー・リード氏(昨年末に逝去)の首席補佐官を務めた人物です。

今年5月、英フィナンシャル・タイムズ紙が、米バイデン政府がハイクビジョンに追加制裁を加える可能性があるとスクープした数日後、ハイクビジョン側がウィルソン氏に制裁を逃れられるよう協力を求めていることが判明しています。

ウィルソン氏がFARAに基づき情報開示した内容によると、同氏はハイクビジョン側の要請に対し、「バイデン政権に向けて、静かな、的を絞ったアプローチ」を取るとした上で、財務省、商務省、国務省のキャリア役人に働きかけると答えています。

例えばそのうちの1人が、財務省・外国資産管理室に所属する「広い心を持つ」女性。別の人物が商務省・産業安全保障局(Bureau of Industry and Security/BIS)に所属する男性です。産業安全保障局は、ハイクビジョンも対象となっているエンティティリスト(貿易上の取引制限リスト)を発行している部署です。

ハイクビジョン側はウィルソン氏のロビー活動に対し、5~10月にかけて30万ドル、その後も追加で支払いを行い、合計52万5千ドル(約7千万円超)の支払いを契約しているとのこと。

ハイクビジョンがロビー活動に費やしている金額は2000万ドル(現在の相場であれば30億円近く)に上るとも推定されており、同社はウィルソン氏以外にも、元上院議員など政府高官を自社のロビイストとして雇っています。この度の一連の外国代理人登録により、ロビー活動のごく一部が明らかになった形です。

フィナンシャル・タイムズが追加制裁の可能性を報じて以降、現時点ではまだ追加制裁は行われていませんが、前述のロビー活動と関係があるのかは不明です。

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