2022年8月号記事

ニッポンの新常識 軍事学入門 25

ウクライナへの武器支援は勝つ気がない

社会の流れを正しく理解するための、「教養としての軍事学」について専門家のリレーインタビューをお届けする。

元陸上自衛隊小平学校
副校長

矢野 義昭

矢野義昭
(やの・よしあき)1950年、大阪府生まれ。京都大学卒業後、一般幹部候補生として陸上自衛隊に入隊し、第1師団副師団長兼練馬駐屯地司令などを歴任。元陸将補。現在、(財)日本安全保障フォーラム会長、日本安全保障戦略研究所上席研究員、防衛法学会理事を務める。著書に『核拡散時代に日本が生き延びる道』(勉誠出版)など多数。

ロシア―ウクライナ戦争をめぐり、バイデン米政権をはじめとする北大西洋条約機構(NATO)加盟国は、ウクライナに武器や金銭などを援助しています。「ウクライナが勝つにはさらなる武器が必要」との見方が浮上していますが、これまでの効果を見れば「もう勝てない」ことが分かると思います。

ウクライナの親露派政権が転覆した2014年以降、アメリカは64億ドル(約8600億円)を超える援助を行っています。うちバイデン政権の支援は46億ドル(約6200億円)以上で、歴代政権では突出してウクライナに肩入れしています。

注目すべきは、武器支援は「全て貸与」であり、ウクライナには返済義務が課され、莫大な債務を負うことです。例えば日本は日露戦争の借金を80年以上かけて完済しました。ウクライナは借金が棒引きされない限り、塗炭の苦しみを味わうでしょう。

またウクライナは借金の担保として食糧や天然資源を差し出さざるを得ず、アメリカは同国の戦略資源を差し押さえて経済支配を強めるなど、ウクライナにとっては苦々しい面もあります。戦後復興においても、米企業が原則仕事を受注するので、支援に回る日本はお金だけを出させられ、利益は得られません。