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ロシア─ウクライナ戦争をめぐり、米紙ニューヨーク・タイムズがこのほど、「ウクライナ戦争を止めることは不可能かもしれない。そして、アメリカはその責任の多くを背負うことになる」と題した論説記事を掲載しました。

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論説記事を寄稿したのが、米ジャーナリストのクリストファー・コールドウェル氏。サルコジ仏大統領の顧問を務めたアンリ・ガイノ氏が仏紙フィガロの紙面で、アメリカの近視眼的なリーダーシップの下、ヨーロッパ諸国がロシアとの戦争に「夢遊病」で向かっていると警告したことについて、コールドウェル氏はそれに触れながら、アメリカ外交を以下のように批判しました(夢遊病とは、英歴史家クリストファー・クラーク氏が、政策担当者らが下す判断が戦争に向かうことに気づかないことに対して使った言葉のこと)。

「アメリカは2014年に、合法的に選出された親ロシア派のヴィクトル・ヤヌコヴィッチ政権に対する暴動─最終的には過激な暴動─を支援した。次にロシアは、歴史的にロシア語を話すウクライナの一部で、18世紀以来、ロシアの黒海艦隊の本拠地だったクリミアを併合した」(※ヤヌコヴィッチ政権の転覆がクリミア併合を招いたことを意味する)

「近年、ロシアがクリミアを支配したことで、安定した地域協定が保たれているように見えた。少なくとも、近隣のヨーロッパ諸国は寝た子を起こすな、だった。しかし、アメリカはこの協定を決して受け入れなかった。2021年11月10日、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)を支持し、"ロシアによる現在進行形の侵略"を非難し、クリミアのウクライナへの再統合に対して"揺るぎないコミットメント"を確認した『戦略的パートナーシップ憲章』を、アメリカとウクライナは署名した。この憲章は『攻撃しないと攻撃されるとロシアに確信させた』とガイノ氏は(フィガロに)書いている」

「私たちは、エスカレートする戦争に勝てると信じさせる根拠をウクライナ人に与えてしまった。もしアメリカが傍観していれば、死ななかったであろう何千人ものウクライナ人が亡くなった。それ(彼らが亡くなる姿)は当然、アメリカの政策立案者たちの間で道義的・政治的義務感、つまり、『このまま現状を維持して紛争をエスカレートさせ、どんな過剰な行動にも対応しなければならない』という意識を生むかもしれない」

「アメリカはエスカレートしやすいだけでなく、その傾向があることをも示している。バイデン米大統領は3月に、プーチン露大統領が『権力の座にとどまれない』と主張する前に、神の名を呼んだ。4月にはロイド・オースティン米国防長官が、アメリカは『ロシアの弱体化を望む』と説明した」

「(言語学者の)ノーム・チョムスキーは4月のインタビューで、こうした『英雄的宣言』がもたらす逆説的な誘因に警鐘を鳴らしている。『それはウィンストン・チャーチルの物真似のように、とてもエキサイティングに感じられるかもしれない』と彼は言った。『しかし、結局彼らが行っているのはウクライナを破壊しろ、ということだ』」

米メディアから対露強硬論に否定的な見方が上がり始める中、バイデン氏は、「アメリカの狙いは明快である。さらなる侵略を抑止・防衛する手段を備えることで、民主的で独立し、主権を有した繁栄に満ちたウクライナを見たい」と語り、あくまでウクライナを支援しつつ、戦争を終結させるのは外交のみであると主張しました(31日付ニューヨーク・タイムズ電子版)。

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