2022年7月号記事

ソフトバンクも"育ての親"

常軌を逸したウイグル・ジェノサイド

中国・新疆ウイグル自治区では、今なお現在進行形で、中国当局によるウイグル人への人権弾圧が行われている。
ここには、「ウイグル民族そのものを根絶やし」にするという意志が込められており、ジェノサイド(民族大量虐殺)そのものだと言える。
本記事では、新疆ウイグル自治区出身のウイグル人女性作家と、『AI監獄ウイグル』という著書を発刊したアメリカ人ジャーナリストに、その実態を語ってもらった。

1.在外ウイグル人に杉原千畝の「命のビザ」を!

ウイグル人作家 マリアム・スルタン ──本誌p.68

2.米ジャーナリストが見た"AI監獄ウイグル"

アメリカ人ジャーナリスト ジェフリー・ケイン ──本誌p.71


Interview 1

在外ウイグル人に杉原千畝の「命のビザ」を!

トルコ在住のウイグル人作家は、日本に対し、第二次大戦中にナチス・ドイツに迫害されていた多くのユダヤ人にビザを発給した外交官・杉原千畝のように、在外ウイグル人が危機に陥った場合、ビザを発給して救ってほしいと訴える。

マリアム・スルタン

作家

マリアム・スルタン

(Meryem Sultan) 東トルキスタン南部のアクス生まれ。2004年、中国民族大学ウイグル語文学科に入学。11年にトルコのアンカラ大学に留学。現在もトルコ在住で、チャガンタイ語の研究に従事し、多くの文学作品を執筆。17年、母のアイグルさんが強制収容所に収容されて以降、ウイグル女性の人権擁護を訴える活動で中心的役割を務める。

マリアム・スルタン氏(以下、マ): 私の母(アイグル)は2017年9月に中国の強制収容所に入れられたことが、米メディアの取材で明らかになりました。2年間の収容所生活を経て解放され、19年4月と7月にビデオで通話しました。

私は18年に独立中国PEN協会(*1)の林昭記念賞(*2)を受賞したので、中国当局が私の活動を阻止するために母を使って圧力をかけた可能性があります。

(*1)国際ペンクラブの会員支部の一つで、世界中の中国人作家の言論・執筆活動の自由を守ることを目的とする団体。
(*2)林昭は文化大革命中に毛沢東国家主席の政策を批判して投獄され、獄中で自らの血で壁などに詩文を書いた女性作家。林昭記念賞は強権に反抗し、自由を追求する精神を体現した若手女性作家に授与される。

出身地の警察官が在外ウイグル人を監視

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マリアム・スルタン氏の母アイグルさん。

──アイグルさんからの連絡は頻繁にあるのですか。

: この5年間でビデオを通して話ができたのは3回だけで、それ以外は何の連絡もありませんでした。ただ、リバティ誌の取材の数日前、母から電話があったのです。今回は、見ず知らずの中国人が母に会いに行き、母はその中国人の携帯電話からトルコ在住のウイグル人に連絡し、そのウイグル人が私を訪ねてきて、ビデオ電話が成り立ちました。

母は「私は何も問題ないから、余計な活動はしないでほしい」と言っていました。私が何か活動をしたりすると、母から電話が来てそれを阻止するのです。

母は「いつも家にいる」と言うのですが、信じていません。もし家にいるなら、家から電話すればいいはず。知らない中国人の電話を使うということは、今も強制収容所にいる可能性を否定できないと思います。

中国当局が家族を利用して在外ウイグル人に圧力をかけるのは日常的なことです。反中国の活動をしていない人にも、出身地の担当警察官から常に連絡が来ます。中国は国内外全てのウイグル人を支配下に置いてルールを守らせ、外国でも中国にいるように生活することを強要するのです。

私は東トルキスタン(以下、ウイグル)南部のアクス出身なので、アクスの担当警察官から連絡が来て、生活状況や交友関係、勉強状況、考えの変化などを報告させられていました。今回のビデオ電話にも、アクスの警察官が関与していたようです。