2022年5月号記事
ウイグル人の証言
ここまでひどいのか!
中国のウイグル・ジェノサイド
中国共産党は、東トルキスタン(新疆ウイグル自治区)に住むウイグル人に対し、人権弾圧の域を超え、ジェノサイド(民族大量虐殺)を現在進行形で行っている。
今も多くの人々が強制収容所に収容され、苦しみの中にある。
彼らの解放を訴えるアメリカ在住のウイグル人活動家2人に話を聞いた。
CONTENTS
1.愕然とした義弟の17年の禁固刑
セーブ・ウイグル チームリーダー グルロイ・アスカル
2.NASAのウイグル人エンジニアが明かす 我々はすでに900万人の同胞を失った
ウイグル・プロジェクト・ファウンデーション会長 アーキン・シディック
Intervie─ウイグル人の証言 1
愕然とした義弟の17年の禁固刑
家族が中国共産党に拘束されていることについて声を上げ続けているウイグル人女性がその胸の内を明かした。
グルロイ・アスカル
今、中国共産党に拘束されている義理の兄弟がいます。
1人はアリム・スレイマン。私の夫の弟です。2014年にトルコ語を勉強するためにトルコに渡った後、東トルキスタンのシャヤールの病院に戻って歯科医師として働いていました。しかし、16年6月に拘束されました。30代前半で婚約者もいたのに、結婚式の直前に拉致されたのです。
彼が逮捕されて以来、夫はシャヤールに住んでいる家族の誰とも話すことができていないので、なぜ逮捕されたのか、その理由は分かりません。そして1年ほど前、アリムが裁判所から17年の禁固刑を言い渡されたことを知り、愕然としました。
歴史学教授である義兄も収容所に
2人目はアズマット・バティ。2番目の姉の夫です。彼は歴史学の教授で、東トルキスタンの最大都市ウルムチ市にある陸軍大学で教鞭を執っていましたが、21年5月に職場から連れ去られました。彼は19年初めにも一度拘束され、年内に釈放されていました。
「再教育を受ければすぐに解放されるかもしれない」と、周りの人から言われたので私は沈黙していましたが、2~3カ月前、アズマットの裁判が始まることを知りました。彼は本当に男らしく、正しいと思ったことは貫き通す人なので、裁判では深刻な判決が出るはずです。
「最悪な方向に向かっている」と直感した私はさまざまなジャーナリストと連絡を取り、行方不明の家族についてSNS上で積極的に訴え始めました。中国当局はアズマットが歴史を教えているからターゲットにしたのだと思います。中国はウイグル族の国、歴史、文化、伝統、宗教など全てを消し去りたいと考えているからです。
頻繁にかかってくる中国語の電話
私が活動を続けていると、中国当局から圧力を受けることは日常茶飯事です。家族を使うのは中国当局の常套手段で、ウイグルに住む家族からは、「悪いことをしないで」と言われました。
他によくあるのは、中国語の電話です。例えば、「こちらはヒューストンの中国大使館です。重要な書類を所持しているので、〇〇番に電話して下さい」という電話がかかってきます。指定された番号に電話し、「あなたは誰ですか。大使館の方ですか」と尋ねると、相手は大使館の人ではないのです。こんな電話は何度もありました。
他にも、私のSNSに別の都市から不正ログインされそうになったこともあります。初めは怖かったですが、あまりに頻繁に起こるので慣れました。
私たちが恐れているのは、強制拉致と臓器摘出です。私も一度だけ、ウルムチの空港で臓器が入った箱を運ぶための特別な通路を見かけたことがあります。
中国共産党は非常に残酷で、ウイグル人のDNA情報をデータベース化し、強制収容所のウイグル人から臓器を摘出しています。愛する家族を連れ去られた全てのウイグル人は、そのことをはっきり認識しています。アリムとアズマットの拘束は、本当に危険なことなのです。
アリム・スレイマンさん
東トルキスタンのシャヤールにあるウイグル伝統医学病院の歯科医師。懲役17年の実刑判決を受けた。
アズマット・バティさん