ウクライナ侵攻を受け欧州連合(EU)は、ブリュッセルでエネルギー事情を議論する緊急会議を開催。画像はデンマークのダン・ヨルゲンセン気候・エネルギー相。画像: Alexandros Michailidis / Shutterstock.com
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緊迫するウクライナ情勢を巡って、ロシアの天然ガスに依存する欧州諸国はエネルギー確保のため、原子力や石炭火力への回帰を迫られています。
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例えばドイツは、自国で消費する天然ガスの5割、石油の3割をロシア産で賄っており、ロシアとドイツを結ぶ新たな天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」の建設計画も進めていました。
しかしドイツのショルツ首相は2月22日、同計画を凍結する考えを発表。27日には、エネルギー政策を大きく転換する方針を示しました。同国が掲げていた、2030年までに石炭火力発電所を段階的に廃止し、今年末には原子力発電所を全て閉鎖するという「脱炭素計画」を取り止め、発電所の運用期限を延長する可能性もあると指摘されています。
フランスのマクロン大統領も10日、6基の原発を国内で新設すると発表しました。28年に着工し、35年の稼働開始を目指すとのこと。最大で14基の原発を新設予定です。
また、喫緊に想定される天然ガスの不足に対しては、アメリカを中心に、欧州への協力が世界的に呼び掛けられています。
日本政府は9日、自国が確保している液化天然ガス(LNG)の一部を融通すると表明しました。LNGの主要輸出国であるオーストラリアも、「国際的な友好国からの要請を受ければ、支援する用意がある」との方針を示しています。
国内では"脱炭素の理想"を掲げ再生可能エネルギーへの移行を進める一方で、現実問題として賄うことのできないエネルギー需要を他国に依存していたツケが、ここにきて噴出しています。
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