《ニュース》
米議会の超党派諮問機関「米中経済安全保障調査委員会」がこのほど、2021年の年次報告書を公表。報告書は、台湾有事をめぐって、「両岸の抑止力は危険な不確実性の時代にある」と初めて警告しました。
《詳細》
報告書は、中国が数十年間にわたって台湾侵攻に必要な軍事開発を行っており、その重要なマイルストーン(一里塚)が2020年だったと指摘。そして現在、中国が台湾に侵攻するための「初期能力」(必要最低限の能力)を有しているか、それに近い状態にあると評価しています。
その上で、現在の両岸の抑止力について、「危険な不確実性の時代(a period of dangerous uncertainty)」と表現し、次のように警告しています。
「米軍の通常軍事力だけでは、中国の指導者が台湾への攻撃を仲立ちすることを抑止し続けることはできないだろう。抑止の失敗は、中国の指導者が、米国には軍事的能力や政治的介入の意志がないと考えたり、米国の政策の曖昧さを解釈して、中国の攻撃が米国の決定的な反応を引き起こさないと考えたりした場合に起こりやすい」
一方、報告書は、そうした中でも抑止力が維持されているのは、「中国の指導者たちが、侵略の試みが成功するかどうかの不確実性や、そのリスクと結果について深く懸念しているからである」と指摘します。
中国軍は統合運用や人材の質などの面で弱点があるほか、もし台湾侵攻が失敗すれば、中国共産党の威信が失墜します。自国経済へのダメージも無視できず、中国を脅威とみなす国家連合の形成を促す可能性もあります。
とはいえ報告書は、習近平・国家主席が「中国史上最も偉大な指導者の一人として名を残したい」という野心によって、上記のようなリスクを取ることをいとわない可能性もあると指摘しています。
また、インド太平洋における米軍の将来的な展開や新しい兵器システムの開発が進んでおり、巻き返されて軍事バランスが不利になる前に台湾侵攻しなければいけないという焦りが生じる可能性も指摘しています。
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