2021年7月号記事

Movie

映画監督 Interview

「トゥルーノース 」

それぞれの「トゥルーノース」を探してほしい


北朝鮮の政治犯強制収容所で過酷な毎日を生き抜く日系家族とその仲間たちを3Dアニメーションで描く映画「トゥルーノース」。収容経験のある脱北者や看守などに取材を重ね、10年もの歳月をかけて完成させた本作について、清水ハン栄治監督に聞いた。

 

トゥルーノース
監督・脚本・プロデューサー

清水ハン栄治

Profile

1970年、横浜市生まれの在日コリアン4世。2017年のTED Resident、University of Miami MBA。著書に『HAPPY QUEST』。東南アジアのアニメーター・ネットワーク「すみません」主宰。12年より62ヵ国で公開され、世界の映画祭で12の賞を獲得したドキュメンタリー映画「happy-しあわせを探すあなたへ」をプロデュース。本作「トゥルーノース」が初監督作品。

 

 

◆ ◆ ◆

──なぜ北朝鮮の強制収容所を初監督作品のテーマに選ばれたのですか。

母から「近所の◎◎ちゃん」や「お世話になった●◎さん」など、多くの知り合いが帰還事業で北朝鮮に渡り、大半が音信不通と聞いていたこと。そしてプロデュース作「happy」は「幸せって何なのか」という普遍的な問いをテーマにしたのですが、「なぜ人は生きるのか」という、同じく普遍的な問いにも取り組みたいという思いから、このテーマになりました。

──複数の脱北者の方が鑑賞され「この通りだ」「よく描いてくれた」と涙を流されたそうですね。

とても光栄に思っています。日本では、「拉致被害者の方たちはとてもかわいそうだけど、帰還事業で帰った人たちは自分で選んだ結果だから自業自得」というような声を聞くことがあります。でも人命は皆、尊いものです。北朝鮮で大変な目に遭った人々が、伝えたいけど伝えられないことをサポートできた。やってきたことが間違いではなかったと感じました。

──コロナ禍での上映となりますが、作品を通して伝えたいメッセージをお願いします。

「トゥルーノース」は、直訳すると「北の真実」。でも英語の慣用句「羅針盤」「生きる意味」でもあります。本作を観た皆さんに、トゥルーノースを探してもらいたい。ちょっと立ち止まり、生きる上で自分が譲れない、目指すものについて考えてもらえればと思います。


 

Movie Information

【スタッフ】
監督・脚本・プロデューサー:清水ハン栄治
【キャスト】
声の出演:ジョエル・サットン、マイケル・ササキ、ブランディン・ステニス、エミリー・へレスほか
【配給等】
配給:東映ビデオ
【公開日】
2021年6月4日よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー