27日付インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙の1面トップに、「日本独特の原子力トラブル:癒着カルチャー」と題する日本にとって不名誉な記事が出ている。以下、抜粋紹介。

・日本では原子力産業と政府当局の間に不透明なコネクションのネットワークが存在し、一般に「原子力村」と呼ばれている。この呼び名は、関連当局が原発の安全上の問題点を隠蔽しつつ原子力産業を推し進めてきたという、政府と業界の癒着関係や、彼らが安全性の向上よりも自分たちの利益を守ることのほうに関心があるという体質を言い表している。

・日本のいろいろな「ムラ社会」同様、原子力産業の上層部、官僚、政治家、科学者たちは、原発建設ビジネスや甘い汁を吸える地位、政治的・財政的支援などを与え合って繁栄してきた。こうした世界にあって原子力の安全性に正面から疑問を呈する者たちは村八分(village outcasts)にされ、昇進や支援を失った。

・政策面で影響力を持つ立場の官僚が原発の味方をする理由の一つは、天下りのためである。1959年から2010年にかけて、通産省や経産省のトップクラスの官僚4人が次々に東京電力の副社長に天下りしている。そのポストは当該省庁の指定席(reserved seat)なのだ。

・例えば米国では、原子力産業の主たる監督官庁である原子力監視委員会は、海軍で原子力技術を学んだ人材など、原子力産業とつながりを持たない人々の間から委員を人選できる。だが、日本で同様の規制機関である経済産業省の原子力安全・保安院(編集部注・事務官僚で構成)は、原子力についての包括的な法規を起案するだけの技術的専門性に欠けているため、そうした専門性については原子力産業側に頼る傾向がある。

原子力安全・保安院については、原子力の規制機関であるにもかかわらず、推進側である経済産業省の傘下にあることを疑問視する声もある。一般国民にはわかりにくい「原子力ムラ」については、週刊東洋経済4月23日号も図解入りで説明している。弊誌は基本的に、日本は原発の安全性を高めた上で原発を推進すべきとの立場を取るが、長年の悪しき癒着の構造を改めることも安全性向上のための重点項目の一つだろう。(司)

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