2021年5月号記事
幸福実現党 党首
釈量子の志士奮迅
第102回
幸福実現党 党首
釈 量子
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北京五輪は中国の「踏み絵」
東京五輪を開催できるかどうか──。最終判断のタイムリミットが迫っています。
一部報道によれば、政府は海外からの観客を呼ぶことは断念し、選手団のみを招致しての開催を検討している、とのこと(3月中旬時点)。しかし、世界各国から大勢の人が入国することは変わらず、強毒化したコロナの変異種が日本に入って来ることになれば、目も当てられません。
一方、五輪関係の経費はとてつもない規模になっています。延期に伴う支出増も含めれば、過去最大の1兆6440億円。関連支出も加えれば3兆円余りにまで膨れ上がります。1500億円かけて建設した新国立競技場などへの投資をどう回収するのかも、頭の痛い問題です。
東京五輪がどう着地しても、安倍政権から引き継がれた、外国人観光客やプレミアムフライデー、カジノなどの「遊び」で経済を刺激しようという発想、つまり、「花見酒経済」の終焉を、象徴することになるでしょう。
ボイコットの声も
そうしたなかで懸念されるのは、経済回復の活路を中国に求める動きが、水面下で加速すること。政治的にも"親中"の力学が強まる可能性があります。
すると次に日本を悩ませることになるのが、2022年の北京五輪の問題です。これに対し今、世界中から「ボイコットすべき」という訴えが噴出しています。理由は、ウイグル、チベット、香港における人権弾圧などです。
米議員からも、「北京冬季五輪の開催地変更」を国際オリンピック委員会(IOC)に求める決議案が提出されています。
イギリスでも20年、ドミニク・ラーブ外相が不参加とする可能性を示唆しています。オーストラリア議会でも、複数の党の議員がボイコットを呼びかけています。さらには同年9月時点で160余りの人権団体が、IOCに開催撤回を求める要望書を出しています。
この問題は今後、さらにヒートアップする可能性が高く、そうなった時に日本の政治家が静観を決め込むか、ひどい場合には中国を支援するような振る舞いをするのではないか──。こうした懸念がかなりあるのです。
日本では1964年の東京五輪の成功体験もあり、「人類共通の祭典」である五輪は政治的対立を棚に上げてでも開催すべき善なるものと、思われているからです。
日本政府は1989年の天安門事件の際も、率先して経済制裁を緩め、世界の中国包囲網を破った"前科"があります。
ナチスのベルリン五輪と同じ
しかし忘れてはならないのは、北京五輪が習近平・国家主席の下で行われる初めての五輪であり、中国の覇権国としての威信を誇示するための一大プロジェクトだということ。そして、人権弾圧やコロナ拡散への責任を、「平和の祭典」でうやむやにする「隠れ蓑」だということです。
全体主義国家が、五輪を国威発揚やイデオロギーの対外発信に使う──。この意味で、北京五輪は1936年のベルリン五輪と同じ構図と言えます。開催国ドイツのナチス政権が、「アーリア民族の優位性とヒトラーの権威」を国内外に見せつける機会としたのです。
こうした悪しき政治的目的を伴う五輪については、世界正義にもとるとして「参加しない」という判断は、歴史的にも行われてきました。共産主義のソ連の下で行われた1980年のモスクワ五輪では、同国のアフガニスタン侵攻によって、カーター米政権がボイコットを表明。日本や西ドイツも後に続きました。
逆に言えば、こうしたイデオロギー対立が起きているさなかでの五輪参加・不参加の判断は、「その開催国の政治体制や行動を認めるかどうか」を示す「踏み絵」となります。
日本は北京五輪についても、「覇権拡大・人権蹂躙を続けるなら、ボイコットも辞さない」という毅然とした態度で臨み、「国際正義の筋」を通す必要があります。もちろん、中国からの反作用も予想されるため、そう言えるだけの覚悟と、防衛面や経済面での備えも急ぐべきです。
ぐずぐずと「二股外交」を続け、北京五輪問題でも振舞い方を間違えば、日本が世界の戦略地図を中国に利する方向に傾け、自由主義陣営の足を引っ張ることにもなりかねません。
間違っても経済的利益に釣られ、判断を過つことがあってはならないのです。