《本記事のポイント》

  • バイデン氏、イエレン氏は「炭素税」の導入に前向きな姿勢
  • 環境政策は先進国を弱体化させる運動が紛れ込む
  • 日本はCO2を「実質ゼロ」にしても、地球の温度は0.001度しか下がらない


米大統領選で「勝利」を宣言している民主党のバイデン前副大統領。バイデン氏は公約として、温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)を削減するため、環境インフラ分野に今後4年間で2兆ドル(約210兆円)を投資すると発表している。

バイデン氏がトランプ大統領との相違を世に示したいのなら、環境政策が大きな目玉になることは間違いない。トランプ氏が離脱した「パリ協定の復帰」や「炭素税の導入」に加え、環境政策をテコにすれば、同政策に熱心な「欧州連合(EU)との関係も強化できる」とバイデン氏は考えているのだろう。

バイデン氏が次期財務長官に指名したジャネット・イエレン米連邦準備理事会(FRB)前議長も、炭素税の導入に前向きな姿勢を見せる。そして環境政策重視は、民主党を支援した極左グループへの配慮にもなる。


日本でも炭素税の導入論が高まりかねない

菅義偉首相は、10月の所信表明演説で、温暖化ガスの排出を2050年までに「実質ゼロ」にすることを宣言した。さらに中国の習近平国家主席も、2060年までに実質ゼロを謳うなど、「脱炭素社会」を目指す動きが加速している。

日本でも今年からレジ袋の有料化がスタートしたが、二酸化炭素の排出量に応じて課税する「炭素税」の導入論が高まりかねない。それを後押しするかのように、バイデン氏は環境規制が緩い国からの輸入品に新たな税金を課すことも主張しているほどだ。


環境政策は先進国を弱体化させる運動が紛れ込む

だが、本誌・本欄で繰り返し述べているように、「CO2による地球温暖化」はあくまで仮説にすぎず、多くの科学者から異論が唱えられている。例えば温暖化科学は、平均地上気温の上昇を再現する「モデル予測」に頼っているが、その予測が確実であるとの保証はどこにもない。

それだけでなく、共産主義勢力が伸長し、先進国を弱体化させるために環境政策を悪用しているという学者の意見もある。

ソ連専門家のナタリー・グラント・ラガは、「環境保護という口実を使えば、先進国の産業を弱体化させる対策を適用できる。さらに、彼らの生活水準を下げることによって倦怠感を浸透させ、共産主義の価値観を植え付けることができる」と述べている。

また、国際環境NGO「グリーンピース」の共同創設者の一人、パトリック・ムーア博士も、人為的な地球温暖化説を否定するとともに、同団体が急速に左傾化したことを問題視し、脱退している。


日本は「実質ゼロ」でも、温度は0.001度しか下がらない

CO2による地球温暖化は、数多くの矛盾がある。そうした科学的知見を無視し、日本政府が炭素税の導入に踏み切るのであれば、当然、その費用対効果を国民に提示する必要がある。

だがこれについても、東京大学名誉教授の渡辺正氏の試算によれば、世界のCO2排出量のうち、3.5%しか出していない日本が、人為的な排出量をゼロにしても、たった0.001度しか地球の温度を冷やさないという(本誌2020年2月号に詳述)。

日本は、科学的にも、政治的にも問題が多い環境政策について冷静に見極めるべきだ。

(山本慧)

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