11月16日、カリフォルニア州サンディエゴ郡で州知事の感染症対策に抗議するトランプサポーターたち。写真:ロイター/アフロ


《本記事のポイント》

  • 増税に次ぐ増税で国民は疲弊する
  • ロックダウン不況に襲われる
  • 信教の自由よりカジノに行く権利が優先された


大統領選の直前、アメリカのGDPは飛躍的な回復を遂げ、第3四半期の実質国内総生産は年率換算で前期比33.1%増と、1947年以降で最大の伸び率を見せた。これは実体経済の回復力の高さを示していた。

バイデン氏は勝利宣言をしたが、法律上大統領として就任したわけではない。だがもしバイデン氏が大統領になった場合、アメリカはどう変わるのか。本記事では、アメリカを襲う3つの苦難に焦点を当ててみたい。


増税に次ぐ大増税で国民は疲弊する

まずアメリカ国民を襲うのは、大増税である。

  • 2017年の大型減税措置が撤廃される。標準的な世帯所得は減税効果で約4000ドル手取りが増えたが、その分がなくなり最低でも約2000ドル(約21万円)の増税となる。年収4万1000ドル(422万円)の母子家庭も、1300ドル(約13万円)の増税になる計算だ。

  • 最も高い所得区分の層の限界税率は43.4%へと引き上げられ、高所得者層に対するキャピタルゲインおよび配当に対する課税も、同レートに引き上げられる。

  • 40万ドル(4120万円)以上の所得者に対する給与税は、現在の7.65%から12.4%へと引き上げられる。

  • 2017年の大型減税で21%に下げられた法人税は、28%に引き上げられる。

  • 化石燃料への依存を減らすため、二酸化炭素の排出制限を課す。これが事実上、「見えない課税」となり所得に対して約15%の負担増となる。家計は、増税プラス環境規制による「見えない税金」の、ダブルパンチに襲われる。

  • また今後10年で、環境投資などに、ニューディール政策並みの10兆ドル(1030兆円)規模の歳出をする。この歳出を補うため、近い将来、さらなる増税となって跳ね返ってくるのは必須だ。

不況下で増税したフーバー・ルーズベルト政権の両政策が不況を長引かせた教訓を学ばず、不況を大恐慌にしてしまう可能性が危惧される。


ロックダウン不況に襲われる

さらに国民を苦しめるのは、ロックダウンである。

コロナの感染拡大を受け、ニューヨーク州では、クオモ州知事が19日から公立学校の対面授業を中止させている。カリフォルニア州では、21日夜から12月21日朝まで、人口の約94%をカバーする41郡に対し、社会的集まりなどの不要不急の活動を夜間に禁止すると発表したばかりだ。

民主党の州知事が統治する州に共通するのは「ロックダウン経済です」。こう指摘するのは、ピーター・ナバロ大統領補佐官。同氏は、11月20日のFOX Businessでこう語った。

「ロックダウン経済は、貧困層にとって『逆進的な課税』になります。なぜならロックダウンで真っ先に仕事を失うのは、低所得者だからです。民主党の政策の残酷さはここに現れています。

一方、経済がうまくいっている15州のうち14州は、知事が共和党の州です。これから冬にかけて、ロックダウンを行う州が増えることで、貧しい人たちの生活が打撃を受けるのではないかと心配しています」

低所得者層は、トランプ氏の経済政策で所得の伸び率が最も高かった人たちだ。黒人などの貧しい人の"味方"だと装ってきた民主党が、貧困層の暮らし向きをよくできないのだから、皮肉と言える。

懸念されるのは、バイデン氏が大統領になった場合、カリフォルニア州やニューヨーク州で行われている「ロックダウン経済」が全国レベルに拡大されることだ。

バイデン氏は表向き、全国的にロックダウンを行う計画はないと強調するものの、コロナに関するバイデン氏お抱えのアドバイザーの顔ぶれを見ると、ロックダウン賛成派ばかり。

中でも、ミネソタ大学の感染症研究と対策センター長のマイケル・オステルホルム博士は、CNBCに登場し、「"コロナ地獄"に突入するため、ワクチンができるまで、政府はすべてを封鎖すべきだ」と提案。個人や中小企業に対する所得補償をした上でなら、4~6週間のロックダウンは可能だと述べている。

だが弊誌でもたびたび報じてきたように、アメリカのGDPの7割を占めるのは第三次産業のサービス業であり、その特徴は美容院やレストランなどに象徴されるような「接触型」である。

人と人とが交流する中で、付加価値が生まれていることを考えると、ロックダウンはGDPの7割を失わせる自殺的な政策だ。

「これ以上のロックダウンには耐えられません」という国民の声も全米各地から上がっている。州の大半の地域に野外外出禁止措置を出したカリフォルニア州知事を提訴する動きも出てきている。


ネバダ州では、信教の自由よりカジノに行く権利が優先された

裁判に訴えているのは経営者や個人事業主だけではない。全米各地の教会も、信教の自由を定めた修正憲法第一条に基づいて、州知事に対する提訴に踏み切っている。

ロックダウンには、鬱や自殺などの副次的な弊害がつきものだ。地域の教会が開いていれば救いを求めることができるが、教会がロックダウンの対象となれば、心の救済は届かない。

こうした中で、サミュエル・アリト最高裁判事は11月13日、法曹界の保守系の団体「フェデラリスト・ソサイエティ」において、基調演説を行った。その中でアリト判事は、コロナ禍における州政府の制約は、個人的自由、とりわけ信教の自由の権利を侵害したとして、ネバダ州のケースを取り上げた。

「ネバダ州の裁判所は、州知事が国民の健康を守る責任を持っているとして、教会の集会についての規制を州知事に任せるという判決を出しました。

その州知事は、収容人数の50%までであれば、カジノに参加してよいという規制を出しています。カジノが収容できる人数は巨大ですから、多くの人が参加できますし、『その他の州からも来てください』と州知事が呼び掛けたので、多くの人がやってきました。

でもネバダ州では、礼拝場の大きさや、マスクをしているかどうかにかかわらず、礼拝に参加できる人数は、50人までと決められています。

州政府は、お祈りは忘れて、スロットマシーンでギャンブルにうつつを抜かそうというメッセージを州民に出しているのです。

この判決には、苦渋に満ちた選択は必要ありませんでした。憲法を見れば、修正憲法の第一条には、信教の自由条項がありますが、スロットマシーンの条項はありません。

ネバダ州の裁判所は、カジノを礼拝より優先することを正当化する、もっともらしい理由を挙げることもなく、州知事の判断に一任したのです」

修正憲法に積極的権利として規定されている信教の自由を蔑ろにしてでも、ラスベガスのカジノのお客さんを増やすことが妥当だと考える知事を支持したネバダ州判事の判断は、憲法の個人的自由の意味をはき違えてしまっている。州知事にとって、ラスベガスの経済的価値が重要だったとしても、それでもって教会の集いに対する差別的扱いを正当化することはできない。放縦の意味での「自由」を助長して、護るべき本来の自由を見失っているからである。また、それによってつくられる唯物論的な土壌は、かえってコロナを流行らせてしまう原因となる(『コロナ不況下のサバイバル術』第2章「免疫力を高める法」参照)。

バイデン氏が大統領に就任すれば、増税やロックダウンによる不況のみならず、繁栄する国家の条件とも言える神を信じる自由まで抑圧される世界がやってくる。民主党的な「感染症全体主義」に反対の声を上げることは、アメリカの没落を防ぐことにもなるはずだ。

(長華子)

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