2020年12月号記事

増税学者の来世は無間地獄か!?

こんな時代だからこそ、無借金経営と減税を目指す

名経営者が今の日本政府を視たら、「無借金経営」を目指し、「減税」に取り組むに違いない。

そのプロセスを真っ向から否定する「増税学者」の罪はいかに─。

日本政府の財政悪化は、誰の目にも明らかだ。政府の借金である累積債務は1100兆円超えと、GDPの2倍以上で財政再建は待ったなし。「増税」が何度も議論されている。

「足りないので増税」というのは簡単だが、その前に、政府を一つの事業体と見た時に、「そもそも"経営"として適正なのか」というチェックが必要だ。

2020年度の国家予算は、税収が63兆円、その他の収入も合わせると70兆円。当初の支出は100兆円だったが、コロナの問題で補正予算が組まれ、160兆円に。赤字国債は、そもそも30兆円発行する予定だったが、補正予算の分の追加発行で計100兆円に。そして過去の国債償還は23兆円だ。

経営の要諦は「入るお金」と「出るお金」の、収支のバランスにある。「100兆円単位」だと実感が湧きにくいので、「兆」を「億」に変えたモデルで、収支を見てみたい。

つまり収入が70億円で支出が160億円。通常は、年30億円前後借り続けているが、今年の借り入れは100億円に到達。過去の借金を23億円返済しているが、累積債務は約1100億円を超える。

年収の倍近くを借り入れ、しかも返す以上に借り続けているとなれば、自転車操業を通り越して「雪ダルマ型赤字経営」の極致だ。企業経営で見れば狂気の沙汰とも言えるような「倒産会社」に分類される状況だ。

政府も経営を誤れば倒産する

「デフレで民間の資金需要が弱い。銀行はいくらでも国債を引き受けてくれるから大丈夫」という声が聞こえてきそうだが、コロナ禍で金融機関の経営状況が危なくなってきた。

「銀行からの国債買い取り」で事実上、「国債の中央銀行引き受け」(お札を刷って国債を引き取る)を行ってきた日銀も、このままでは債務超過への転落が近づいている。

「国には強制徴税権があって、収入源が確保されているから大丈夫」とする識者もいるが、本誌10月号(*)で指摘した通り、「どこかで必ず誰も信用しなくなる」。国債の引き受け手がいなくなる日が来るのだ。

その引き金は、おそらく外国の格付け機関が引くだろう。現に今年6月以降、複数の格付け機関(S&Pなど)が日本国債の格付け見通しを引き下げた。「国は企業と違って倒産しない」とは考えない方がよい。戦後倒産した外国政府は山のようにある。日本政府も経営を誤れば倒産する。

増税すれば景気を直撃し、間違いなく税収そのものを減らす。であれば、今こそ健全な「無借金経営」を目指さなければならない。そのモデルは目を民間(企業)に転ずれば、必ずあるのだ。

(*)「あなたの貯金が狙われている! 貯金税という悪夢」

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