《本記事のポイント》
- オーストラリアが中国に特派員を置いていないのは、1970年代以来初めて
- 豪シンクタンクが、恣意的な拘束などを「中国共産党の強制外交」と報告
- 菅直人首相は強制外交に屈した
中国政府から一時的に出国を禁じられ、取り調べを受けた中国駐在のオーストラリア記者2人のうちの1人が、このほど放送された豪公共放送ABCに対し、尋問されたことについて「オーストラリア記者に対する嫌がらせ」との見方を示した。
事情聴取を受けたのは、ABCの北京特派員、ビル・バートル氏と、経済紙オーストラリアン・フィナンシャル・レビュー(AFR)の上海特派員、マイケル・スミス氏。両氏は3日未明のほぼ同時刻に、突然自宅に現れた中国の治安当局者から出国禁止の事実を告げられ、事情聴取を求められた。当局側は、8月に拘束した中国出身でオーストラリア国籍を持つジャーナリスト、チェン・レイ氏との関係を聞きたがったという。
2人は身の危険を感じ、オーストラリア大使館に助けを求めた。その後オーストラリア政府が中国政府と交渉した結果、出国禁止措置が解除され、帰国の途に就いた。
スミス氏は8日付AFRで、「一説には、オーストラリア政府が北京に立ち向かおうとしている時に、オーストラリア政府を威圧するための、もう一つの作戦だったと言われている」「オーストラリアが中国に特派員を置いていないのは、1970年代以来初めてのことだ」などとレポートしている。
「中国共産党の強制外交」
オーストラリア戦略政策研究所は1日、「中国共産党の強制外交」と題する報告書を発表。恣意的な拘束などの非軍事的な手段を用いた恫喝について、他国への侵略と一般的な外交の中間であるグレーゾーンを利用した「強制外交」と呼称し、中国の脅威に警鐘を鳴らしている。
報告によれば、中国は過去10年間にわたり、アメリカやニュージーランドなど27カ国と外国企業に対し、累計152回の強制外交を仕掛けた。特に2018年以降は急増しているという。
今回のジャーナリストを標的にした出国禁止も、その強制外交の一環であろう。オーストラリアと中国の対立が深まる中、中国は新たな"制裁"に踏み切ったと言える。
菅直人首相は強制外交に屈した
日本もしばしば、強制外交の標的となっている。それに恐れをなした出来事が2010年に起きた。
同年9月に発生した中国漁船衝突事件をめぐり、当時の菅直人首相が、逮捕した中国人船長の釈放を指示。11月に横浜市で開催予定だったアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に、中国国家主席の胡錦濤氏(こ・きんとう)が来なくなることを懸念したことが原因だったと報道されている。
日本は、独裁国家・中国の恫喝パターンをしっかりと見抜き、理不尽な要求をのまず、悪に屈してはならないだろう。
(山本慧)
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『ザ・リバティ』2020年10月号
幸福の科学出版
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