中国の次の大国として台頭すると見られるインドは、IT技術や英語力など日本より進んでいる面もあるが、一方で古い因習が根強く残る国でもある。13日付インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙に有名なインド人女性ジャーナリストのNilanjana S. Royが「インドの反女子運動」と題して書いている。以下、要約。

・インドでは女児の妊娠中絶が盛んに行われている。0~6歳の男児1000人に対する女児の人口は2001年には927人だったが、2011年には914人まで低下する見込み。インドでは胎児の性別判定は違法だが、実際には簡単に性別判定をしてもらえる。医療技術の発達により、性別判定クリニックの車がそれと知られずにどこの村にも出かけて行けるようになったことで、女児中絶に拍車がかかっている。

・女児より男児が好まれる理由はいくつかある。息子は一家の稼ぎ手になるが、娘は他の家に嫁に行ってしまって両親の面倒を見てくれなくなる。また、娘が結婚するときに持たせねばならない多額の持参金は一家にとって重い債務となる。農村では、娘に土地を相続させても夫の家族に取られてしまうことへの懸念が強い。

・加えて、持参金を約束通り払わない女性が夫に殺される「持参金未払い殺人」(dowry deaths)は、もはや世間の目を引かないほど頻繁に起きている。1992年の経済自由化以来、インド人は便利な家電製品などへの消費欲求を高め、結婚の際に夫側から要求される持参品も増えている。

・若い女性たちは持参金を貯めるために自ら働き、政府は性別判定や女児中絶を監視する部署を設けたが、女性に対する社会的・文化的態度が変わらないうちは真の進歩は訪れないだろう。

多額の持参金の風習は、神々に豪華な供物を捧げるインドの宗教的伝統と関係しているのかもしれない。貧しい時代と豊かな時代では「モノ」の価値も違ってくる。モノやカネへのこだわりが女児の誕生を妨げているとしたら、そうした価値観を見直す必要があるだろう。(司)

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