写真:CSIS/AMTIより
《本記事のポイント》
- 「中国共産党」を自由で民主的な国家の敵と定める
- 人工島の破壊で中国の兵糧攻めができる
- バイデン民主党政権下で大規模な戦争が起きる可能性も
ポンペオ米国務長官は7月13日に、南シナ海の大半の地域にまたがる中国の海洋権益に関する主張は完全に違法だと、中国の海洋侵出を批判。その中で、オランダ・ハーグの仲裁裁判所が2016年7月に出した仲裁裁判所の判決を支持すると表明した。
また24日の「中国共産党と自由世界の未来(Communist China and the Free World's Future)」と題したスピーチでは、中国共産党を「敵」と認定してスピーチを行った。質疑応答の中で、国益のある場所について、レッドラインを引くことが相互の誤解を避け、将来の紛争を防ぐために重要であると述べた。
ここまで踏み込んだ発言は初めてである。アメリカと中国との出方次第によっては、南シナ海から狼煙が上がることもあるかもしれない。ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)で安全保障学や国際政治を教える河田成治アソシエイト・プロフェッサーに、アメリカの対中戦略および南シナ海有事の可能性について話を聞いた。
(聞き手 長華子)
アメリカは中国共産党を「敵」と認定した
元航空自衛官
河田 成治
プロフィール
(かわだ・せいじ)1967年、岐阜県生まれ。防衛大学校を卒業後、航空自衛隊にパイロットとして従事。現在は、ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)の未来創造学部で、安全保障や国際政治学を教えている。
トランプ政権は2017年の国家安全保障戦略(NSS)で、対中戦略を変えるとして、こう述べています。「(過去20年間の政策では)中国との関係を深め、国際社会に溶け込ませていけば、穏やかで信頼に足るパートナーに変化すると考えていたが、それは間違っていた」。
アメリカは中国を国際社会に引き入れていけば、信頼に足るパートナーに変わると考えていたが、その期待の実現は見込みが極めて低いものだと理解したということです。そして貿易関税で強制的に変更を迫るやり方に政策転換します。
しかし今年に入り、この方針にも終止符が打たれます。その主たる理由は、新型コロナウィルスと香港の2つです。
中国はコロナのヒト-ヒト感染の事実を覆い隠し、1月下旬まで中国人を渡航させて感染を拡大させました。アメリカの死者は16万人、感染者は500万人にも上っています。
2つ目は、「香港安全維持法」を成立させ香港の「一国二制度」に終止符を打ったことです。
こうした2つの事件をきっかけに、アメリカの対中戦略は、極めて強硬なものへと変化しました。
香港安全維持法の対抗措置としてアメリカは「香港自治法」を成立させました。1年以内に安全維持法を撤回しないなら、中国の銀行および関係した外国の金融機関に制裁が発動され、中国企業は香港経由で米ドルを調達することができなくなります。
香港による融資の約7割は中国本土向けです。香港は中国にとって資本調達の命綱のため、今後の焦点はこの制裁がいつ発動されるかになります。
アメリカはターゲットを「中国共産党」に絞る
スティーブ・バノン元戦略補佐官が「反共の四騎士」と名付けたオブライエン国家安全保障担当大統領補佐官、レイFBI長官、バー司法長官、ポンペオ国務長官が6月から7月にかけて連続で対中批判演説を行い、「中国共産党」を批判しました。
ポンペオ国務長官は、「習近平総書記は破綻した全体主義の信奉者だ」と名指しで非難し、「アメリカが中国というフランケンシュタインをつくってしまった」「中国共産党から自由を守ることは、我々の時代の使命である」と演説しました。
習国家主席のことは敢えて「習総書記」と呼び、あくまで「共産党のトップ」に過ぎず、「国の代表」ではないと位置付けを鮮明にしています。中国国民と共産党との分断作戦が念頭にあると思われます。
バノン氏は米テレビ番組で、4人は一貫性のある包括的な戦争計画を立案していると述べ、主要な計画として、以下の3点を挙げています。(1)技術・情報戦、経済戦で中国と対峙する。(2)同盟国と共に南シナ海で自由な海洋秩序をつくる。(3)中印国境紛争でインド側を支援する。
南シナ海の人工島を攻撃して兵糧攻め作戦を行う可能性も
さて気になる今後のアメリカの動向ですが、コロナに500万人も感染したアメリカの怒りはただですまないでしょう。
米大統領選まで残すところ約3カ月。トランプ大統領が劣勢であれば、9月から10月に先制攻撃もあるかもしれません。もしトランプ氏の再選が見えていれば、再選を気にする必要がないため、二期目には大胆な手を打つことが考えられ、二期目の1年以内に行う可能性はあります。
大川隆法・幸福の科学総裁が行ったインド神話の神・シヴァ神の霊言では、トランプ政権がとり得る戦略として、以下の3つを挙げています。
(1)香港や台湾の自由主義と、南部の資本主義にアメリカが支援する、ウイグル等の反乱にインドなどの勢力を加味して後押しさせる。中国政府を開国派と鎖国派とに分断する。(2)石油や食糧ルートの遮断による兵糧攻め。(3)習氏に対する「ソレイマニ作戦(暗殺計画)」。これらの戦略は十分行われる可能性があるでしょう。
中国はエネルギー資源を輸入に頼っていますが、中東やアフリカからエネルギー資源を海上輸送するには、南シナ海を通過しなければなりません。しかも南シナ海には豊富な海洋資源もあります。中国は(2)のアメリカによる「兵糧攻め」作戦を止めるために、南シナ海に防空識別圏を設定し、制空権および制海権を取ろうとしています。
長距離核ミサイルの開発に成功し、原子力潜水艦が水深の深い南シナ海で自由に行動できるようになれば、アメリカ本土を核で狙うことも可能となります。その場合、核による均衡が成立し、アメリカは中国を力で押さえつけることが極めて困難になります。
こうした目論見に対し、アメリカは空母2隻による南シナ海での演習を7月の上旬と中旬の2回にわたって行い、その間にポンペオ国務長官が南シナ海の中国の主張を完全否定する演説をしました。
中国が南シナ海に、米艦隊や潜水艦、哨戒機を寄せ付けない「聖域」を完成させる前に、トランプ大統領は、南シナ海の人工島を攻撃することもあるでしょう。
そのメリットは4つあると見ています。
(1) ハーグの仲裁裁判所の判決で南シナ海に中国の領有権はないとされたので、大義名分が立つ。
(2) 中国本土に対する攻撃と異なり、遠く離れていて民間人もいない人工島に攻撃しても、戦争がエスカレーションするとは考えにくい。
(3) 米本土を狙う核の抑止という国益と、世界の海上輸送の半分以上、全艦船の3分の1が通過する海上交通の安全が確保され、成功すればトランプ氏の支持率が上がる。
(4) 大々的に進めてきた南シナ海の人工島が海の藻屑となれば、習氏のメンツが潰され、求心力が下がり、一党独裁体制崩壊への引き金を引く可能性がある。
民主党政権の誕生で、大規模な戦争へと進展することも
中国としては、トランプ氏とは異なり対中強硬派ではないバイデン政権の誕生を願っているはずです。そのために大統領選挙に介入しつつ、万一トランプ政権が二期目も務めたとしても、やり過ごして25年以降に南シナ海を取ろうと考えているでしょう。
意外かもしれませんが、アメリカは民主党政権時のほうが大規模な戦争が起きやすいのです。その理由について、大川隆法総裁は書籍『法哲学入門』で、こう説いています。
「 民主党政権のときには弱腰で、宥和政策をとることが多いので、相手を増長させ、その結果、相手が軍事的に大きくなってきて侵略などを始めるため、戦争になってしまうことが多いからです 」
米世論調査でトランプ大統領は劣勢と報じられています。もしバイデン民主党政権が誕生すれば、宥和的な政策から、かえって大規模な戦争を招きかねません。
この意味で、2020年はアメリカの民主主義的統治と全体主義的統治との潮目がぶつかる分岐点となります。
米シンクタンクCSISが日本の親中派議員の存在を2年間かけて研究し、その報告書が最近発表されました。国会議員の多数派は親中派で、日本が民主国家との連携に、強く舵を切れるかが危うい状況にあります。しかしそうした状況を打破し、「中国共産党から自由を守る、我々の時代の使命」を果たすべく、日本はアメリカや民主主義諸国と共同歩調を取るべきだと考えます。
【関連書籍】
『シヴァ神の眼から観た地球の未来計画』
幸福の科学出版 大川隆法著
『法哲学入門』
幸福の科学出版 大川隆法著
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2018年12月28日付本欄 南シナ海から始まる米中覇権争いの行方とは 【HSU河田成治氏インタビュー】(前半)
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2018年12月29日付本欄 南シナ海から始まる米中覇権争いの行方とは【HSU河田成治氏インタビュー】(後半)