写真:Fujifotos/アフロ

2020年8月号記事

大恐慌時代が求めるリーダーとは

新型コロナウィルスの感染拡大で、世界は大混乱に陥っている。

危機の時代を乗り越えるにはどうすべきか。

次の時代を拓くリーダーの条件を探った。

(編集部 山本慧、山本泉)


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新しい時代の英雄は大恐慌から生まれる

─統制破りが拓く新時代─

近づく「コロナ恐慌」をサバイバルする心構えについて、名経営者4人のエピソードを紹介する。

今後コロナの「第二波」が起きれば、日本政府や自治体は再び自粛要請を行い、

経済活動を統制する可能性がある。

第一波の統制で傷ついた企業に、さらなるショックが襲い、多くの倒産が生まれかねない。

危機を乗り越え、生き残るにはどうすればよいか。絶望とも思える状況から

運命を好転させた経営者に焦点を当て、新しい時代の可能性を洞察してみたい。

パナソニック創業者

Konosuke Matsushita 松下幸之助

1人も解雇したらあかん

1929年の世界大恐慌時、日本企業の多くが倒産し、松下幸之助(1894~1989年)が創めた松下電気器具製作所(現・パナソニック)の販売も半分以下に急減した。たちまち在庫が積み上がり、創業以来の深刻な事態に直面する。幹部はこう切り出す。

「販売が半分に減り、倉庫は在庫の山です。この危機を乗り切るためには、従業員を半減するしか道はありません」

幸之助はしばらく沈黙して口を開いた。

「なあ、わしはこう思う。松下が今日終わるんであれば、君らの言うてくれる通り従業員を解雇してもいい。けれども、わしは将来松下電器をさらに大きくしようと思っている。だから、1人も解雇したらあかん。会社の都合で人を採用したり、解雇したりでは、働く者も不安を覚えるだろう。大を成そうとする松下としてはそれは耐えられないことだ。みんなの力で立て直そう」

その上でこう畳み掛けた。

「生産を直ちに半減して、工場は半日勤務にする。しかし、給料は全額支給しよう。全員で昼も夜もなく、また休日を返上し、全力をあげて在庫品を売る努力を重ね、耐えつつ時を待とう」

会社が潰れると思っていた従業員は奮起。2カ月で在庫を売り、さらには生産が追いつかなくなるという"奇跡"を起こす。

写真:Fujifotos/アフロ

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