アリゾナ州での銃乱射事件で 追悼演説を行うオバマ大統領。 写真:ロイター/ アフロ
2011年3月号記事
編集長コラム
オバマ大統領による「弱い米国」がはっきりと形を現し始めた。
「財政赤字縮小のための国防費削減は不可欠」という大統領の方針を受け、ゲーツ国防長官が1月、今後5年間で約8兆2000億円削減する計画を発表。次世代ステルス戦闘機F35開発の一部中止などを打ち出した。
これまでゲーツ長官は、最新鋭ステルス戦闘機F22の調達中止を決めたほか、原子力空母11隻や原子力潜水艦18隻の体制を維持する必要があるのか問題提起もしている。
加えて、大統領が設置した、財政赤字問題に取り組む超党派委員会は昨年12月、10年間で計約330兆円もの予算削減を目指す草案を公表した。そのうち4分の3は国防費。欧州とアジアの駐留米軍15万人を10万人に減らすことも含まれている。
法的拘束力はないものの、長期的に財政赤字を減らしていくうえで、一つのたたき台になる。もし、そのまま実行に移されれば、約60兆円の米国の国防費が35兆円程度になる。
一方で、社会保障費については、医療保険改革によって今後10年間で約76兆円を政府が出し、無保険者が医療保険に加入しやすくする。
国防費を大幅に減らし、社会保障費を増やす――。オバマ大統領は「米国を日本化する」と言われているが、これが大きな柱だろう。その結果、米国の「世界の警察官」としての役割がしぼんでいくことになる。