仙台市の街並み。仙台駅の周りには、大型商業施設が集まり、賑わいを見せる。写真提供:ピクスタ。
2020年4月号記事
地域シリーズ
宮城 現地ルポ
日本を照らす光となる
起業家たちの「復興力」
東日本大震災から9年が経つ宮城には、「今度は自分が人を助けたい」と考え、行動している起業家たちが数多くいる。
(編集部 山本泉、塩澤沙智)
3月11日が近づくと、震災関連の行事は増えますが、街もきれいに整備され、震災の記憶は薄れつつあります」
仙台市に住む40代男性は、こう語る。
今年で東日本大震災から9年が経つ。宮城県では、地震や津波による死者が約1万人、全壊した住宅が約8万棟に上るなどの被害が出た。
特に海岸沿いの地域は壊滅的な被害に遭い、当初、「復興は難しいのではないか」とささやかれた。しかし、こうした地域を訪れてみると、新しい建物や道路などが整備され、復興は着実に進んでいることが分かる。
「多くの人のため」に起業
苦境を乗り越え、震災をバネにして、「恩返しのためにも、宮城をより発展させていこう」と頑張っているのが、愛と情熱に溢れる起業家たちだ。
震災後、宮城県は、起業率の高さにおいて全国で第2位に躍り出た。都市としても仙台市の新規開業率は、福岡市に次ぐ全国2位(2014~16年の調査)になっている。
いったん廃業した会社が再開業された事例もあるが、震災を契機にこれまでの人生を見直し、起業にチャレンジしたというケースも数多く見られる。
仙台市の起業支援センター「アシ☆スタ」のセンター長・笹井一史氏はこう指摘する(60ページ参照)。
「震災前は、自己実現のために起業する方が多かったです。しかし震災を経験し、地域の人と助け合ったりして、多くの人が自らの生き方や人生を考え直しました。『自分が助けられたから、今度は自分が人を助けたい』という思いで起業する社会貢献的起業が増えたように感じています」
「地域や多くの人のために」という思いで事業に取り組む起業家たちに、話を聞いた。
農業・アグリードなるせ 安部 俊郎氏インタビュー
福祉・アップルファーム 渡部 哲也氏インタビュー
支援・起業支援センターアシ☆スタ 笹井 一史氏インタビュー
産業・宮城にある「発展の種」