2020年4月号記事
Interview
地域を発展させる「秘策」
宮城県
震災を契機に政治家を志そうと決意した幸福実現党の油井氏に、東北の発展ビジョンを聞いた。
東北が日本の「希望の灯台」となる
幸福実現党
宮城県統括支部代表
油井 哲史
Profile
(ゆい・てつし) 1980年生まれ。宮城県仙台市出身。桜美林大学国際学部を卒業後、広告代理店での勤務を経て、HS政経塾第5期生。塾では主に農業政策などを研究。一般財団法人「いじめから子供を守ろう!ネットワーク」相談員。「新しい宮城を創る会」代表。
毎週、仙台駅の周辺で街宣活動を行っている油井氏。
2020年1月、宮城県の隣の山形県で創業320年の老舗百貨店・大沼が突然倒産しました。山形県は全国で唯一、デパートのない都道府県になり、地元に大きな衝撃が走りました。
倒産の引き金を引いたのは、19年10月の消費増税です。消費税が8%から10%に上がって以降、売り上げは前年同月比30~40%減と、大幅にダウンしたと報じられています。「増税は地方経済を直撃する」ことを実感したニュースでした。
「起業しやすい宮城」に
油井氏は2019年12月、台風19号で被災した宮城県・福島県の地域を慰問。〈上〉釈量子党首と宮城県丸森町を訪問し、第一次義援金を届けた。〈下〉福島県伊達市と本宮市に義援金を渡した。。
今、地方経済を発展させるために必要なのは、民間企業の活動を活性化させる政策です。
アメリカでは、減税を中心とした経済政策「トランポノミクス」が成功しています。日本もこれに学ぶべきでしょう。
まずは企業活動の足かせとなる消費税を5%に戻します。さらに宮城で盛んな農業や雇用などの分野での規制緩和や、役所での手続きの簡略化を進めていきたいです。そうすることで、民間の自由な経済活動を後押しできます。
今後、企業の支援として特に力を入れていきたいのは、ベンチャー企業への支援です。
現在、仙台市は「日本一起業しやすいまち」を掲げて、起業支援に取り組んでいます。過去5年で開業件数が約6倍に急増。宮城県は新規開業率で全国2位になりました。
この強みをもっと発揮していくために、ベンチャー企業を支援する「起業ファンド」を創設していきたいです。さらにベンチャー企業に投資する個人投資家や企業などに対しては、税制上の優遇措置を拡大します。
起業家精神に溢れたやる気のある若者が積極的に新規事業にチャレンジできるよう、チャンスの機会を増やしていきたいと考えます。
また東北経済を支える中小企業を支援し、相続税・贈与税の廃止や、複雑な法人税の軽減税率を引き下げ、簡素化します。
宮城県は東日本大震災で甚大な被害を受けましたが、だからこそ、この地から日本の国を代表するような企業を輩出していきたいと思っています。宮城を中心とする地域が逆境に打ち克ち、繁栄していくことで、東北全体が、日本経済の未来を照らす「灯台」のような存在になっていくことを目指します。
世界が認める東北流の経営
今回、リバティの企業取材に同行して感じたのは、この地域の「経営者の精神性の高さ」です。経営者のお二人(本誌56~59ページ)が共通して「自分たちは守られている」「目に見えないものから生かされている」と話されていたのが印象的でした。
こうしたマインドには世界から一流の学生が集まる米ハーバード・ビジネス・スクールも注目しており、現地実習の研修先として7年連続、東北を選んでいます。
東北の経営者と話をすると、ほぼ全員から「世のため、人のため」という言葉が返ってくるそうです。東北の復興を経営のミッションにしているからこそ、これまでとは質の違う「新しいリーダーシップのあり方」を学べるといいます。東北の地から、「未来の経営者はどうあるべきか」を発信できるのです。
私も仙台の出身です。震災を通して、いろいろな地域や国から支援していただいたことに深く感謝しています。これからの人生は恩返しとして、HS政経塾で学んだ「高貴なる義務」を果たしていきたいと思います。
同じ使命を感じている多くのみなさまと協力して、震災以前に築かれていた以上の東北の繁栄を実現してまいります。
「首相輩出県」とも言われる岩手県出身の幸福実現党役員・松島氏は、東北発展のカギをどう考えるか。
「交通革命」で東北経済はもっと発展する
幸福実現党
総務会長(兼)研修局長
松島 弘典
Profile
(まつしま・ひろのり) 1957年生まれ。岩手県盛岡市出身。東京都立大学工学部を卒業後、三菱商事への勤務を経て、幸福の科学に奉職。理事長、拠点開発局長などを歴任後、現職。
高名な評論家である日下公人氏は、「日本で一番幸福な地は東北だ」と語っていました。私もその意見に同意します。
東北地方は歴史的に見ても、戦地になったことがほとんどありません。そうした理由からか、東北にはどことなく穏やかな空気が流れており、人柄がよい地域だと感じています。
自然にも恵まれ、農業や漁業が盛んなことも大きな魅力です。
東北を発展させる交通革命
この地域をさらに発展させていくために、力を入れて取り組んでいきたいのが交通インフラの整備です。
「ヒト・モノ・カネ・情報」の動く時間を早める「交通革命」を起こすことで物流網が発達し、経済が発展していくからです。
東北には、縦に一本、新幹線と東北自動車道が重なるように通っており、海岸沿いの交通網があまり発達していません(下図)。
2020年度末、復興支援として三陸沿岸道の高速道路が通行料無料で全線開通する予定です。開通すれば、これまで7時間半かかっていた仙台ー岩手県宮古間が、なんと半分以下の約3時間で行けるようになります。宮古ー青森県八戸間の開通も予定されており、さらに便利になります。
今後、東北地方により一層交通網を張り巡らせるために、日本海沿いの道路や、日本海側と太平洋側を結ぶ道路も増やすべきでしょう。
新幹線についても、ぶつ切りになっている路線をなくす事業を進めたいと考えています。そうなれば、他の地域からも多くの人が、仕事や観光で訪れるようになると思います。海外との交流も視野に入れ、東北にある空港のハブ化も検討するべきでしょう。
特に仙台は鉄道や港が集まっており、市中心部から空港にアクセスしやすいのも魅力です。今後、交通網がさらに発達すれば、輸出産業もより活発化します。
仙台に物流などを集約することを意識し、ここを要として東北全体の経済をけん引していくことが望ましいと考えています。
仙台が、名古屋や大阪、福岡のように、東京をバックアップする都市になることを目指したいです。
ILC誘致で新産業を
街宣活動を行う松島氏。駆け付けた娘の知子さんが傘をさしながら、隣で手を振る。
また現在、岩手県や宮城県が進めようとしている国際リニアコライダー(ILC)の誘致に成功すれば、東北はさらに発展していくでしょう(本誌61ページ参照)。
総建設費が約8000億円かかるという理由で日本政府は躊躇していますが、経済効果はその5倍以上とも言われています。
「半導体の父」と呼ばれた東北大学の元研究者のおかげで、仙台では産学連携が進み、電子部品やバイパス、電子回路関連の産業が発達してきました。こうした活動が、ILCを誘致する土壌になっていると考えられます。
ILCで行われる先端研究も、国内外から優秀な人を集め、新しい産業を生む力になります。私も、新たな繁栄をつくり出すILC誘致に、積極的に取り組んでいきたいと考えています。
私は岩手県盛岡市の出身です。この地は東條英機や原敬、斎藤実など、多くの総理大臣を輩出してきました。学生時代には「原敬記念館」を訪れ、原首相が暗殺時に着ていた血染めのシャツを見た時から、「政治とは、命を懸けてやるものだ」と考えています。初心を忘れず、東北の発展に力を尽くしてまいります。