2020年1月号記事

Interview

地域を発展させる「秘策」

大阪

カジノ誘致の有力候補地で活動する幸福実現党の数森副代表に、
ギャンブルに頼らない大阪の経済成長について聞いた。

大阪商人の「公益精神」が
経済を発展させる

幸福実現党
大阪府本部副代表

数森 圭吾

プロフィール

(かずもり・けいご)1979年、大阪府大阪狭山市生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後、JFE商事(株)を経て、HS政経塾第4期生。塾では主に「中小企業の事業承継税制について」を研究。

11月に街頭でアンケートを行い、カジノを含む統合型リゾートの是非に関する大阪市民の声を聞いてみました。

賛否ありましたが、賛成の方は、カジノのエンターテインメント性や、大阪が活性化するというメリットに目が行きがちな印象を受けました。

若者の中には、「カジノをやってみたい」という声もありました。きらびやかなイメージで、賭け事への抵抗を感じにくいカジノをきっかけに、ギャンブル依存症になる人が増えることも考えられます。

一方、競馬場が家の近くにあるという関東に住む女性は、「休日になると、競馬目当ての人で公園が溢れて近寄りがたい雰囲気です。ギャンブルの弊害はいろいろなところに広がります」と、憂慮されていました。大阪にカジノができれば、この女性のように感じる方が増えるのではないでしょうか。

「ギャンブルをするのは個人の自由」という意見もありましたが、原則として、ギャンブル(賭博)は刑法で禁じられています。人生を破滅させ、周りの人も巻き込んでしまう可能性があるからこそ、規制されているのではないでしょうか。これは、人を殺す自由が許されないのと同じ論理だと思います。

税収さえ上がればいいのか

大阪・梅田駅前でカジノ法の是非について街頭アンケートを行った。(結果の一部は本紙41ページに掲載)。

カジノ誘致で一番期待されているのは、経済効果です。しかし海外のカジノ業者が巨額の税金を行政に納めるようになれば、行政は「お得意様」に頭が上がらなくなる可能性があります。

日本に対して政治的な野心を持った国の業者が大阪の土地を買い、独自に巨大商業施設を立ち上げる可能性もゼロではありません。行政は、暗躍を目論む国の資本の流入を止められなくなることも考えられます。

行政は、「税収を増やすためには手段を選ばない」という考えに陥っているように見えます。政府や自治体の政策にも、人々のよりよい生き方を後押しする理念が必要です。

また、カジノ誘致を推進する人たちは、カジノによる収益で依存症対策もできると言いますが、本来は、カジノを誘致するかどうかにかかわらず取り組むべき課題です。

ギャンブル依存症問題の解決を目指し、現在の税収を使ってでも対策を進めるべきでしょう。

「独立自尊」で社会を豊かに

大阪での活動の様子

〈上〉大阪市役所前で「香港の自由を護るデモ」を開催。〈下〉6月には大阪でのG20を前に、日本ウイグル連盟が主催するデモに参加するなど、幅広く活動している。

かつて大阪の商人は、商売を発展させ、公共事業に投資する「公益精神」を持っていました。

戦国時代から江戸時代にかけて活躍した大阪の豪商・淀屋常安は、私財を投じて淀屋橋などのインフラを整備。大坂の陣による焼け野原を復興させるために、淀川の中洲を埋め立てました。

松下幸之助は戦後、空襲で荒廃した大阪に次々と工場を建て、雇用を創出。大阪の復興に貢献しました。大阪には歴史的に、お上に頼らない「独立自尊」の精神があります。自分たちで街をつくり、豊かにするというマインドが流れています。

一方、今夏の参院選で、大阪では特に、教育無償化などの社会保障が注目されました。

しかし、教育が「当然のサービス」になれば、子供たちや保護者の勉強に対する意欲が低下し、先生方のやる気も失われてしまうでしょう。

アメリカの研究では、お小遣いの一部から教育費を負担した生徒は、そうでない生徒と比べて成績が優秀なことが多いということが明らかになっています。「適切な教育を受けるためには、一定の対価が必要」という意識を持つことが、学力の向上と関係しているのです。

また、大学の費用や奨学金の一部免除も取り沙汰されていますが、大学は研究機関です。行政がお金を出して研究に口出しすれば、自由な研究環境が失われる可能性があります。

大阪人の基には、「どんどん儲けて豊かになり、それを社会に還元する」という高貴なマインドがあります。自由に発展する商都大阪の復活を、皆様とともに目指したいです。


幸福実現党 報道局長が語る、大阪の発展ビジョンとは。

大阪が持つ"自由の精神"で日本を復活!

幸福実現党
報道局長

里村 英一

プロフィール

(さとむら・えいいち)1960年、新潟県生まれ。在京のテレビ局宣伝部を経て91年、幸福の科学に奉職。月刊「The Liberty」編集長、幸福の科学グループ広報局長、幸福の科学専務理事(広報・マーケティング企画担当)などを歴任後、現職。「ザ・ファクト」コメンテーター。共著に『誰がマスコミ権力を止めるのか』(幸福の科学出版)ほか。

大阪は、その地に集った商人たちが財を成し、発展してきた歴史があります。

なぜ商人が集まったか。それは自由な気風で、新しいものや珍しいものが喜ばれるような土壌があったからでしょう。

そのような歴史がある大阪に、「お上」の主導でカジノを含む統合型リゾート(IR)がつくられようとしています。IRがあれば人が集まり、海外からのインバウンドも増え、一時的には儲かるでしょう。しかし万博やIRなどの誘致が当たり前になれば、「また国から新しいプロジェクトを引っ張ってきて、手っ取り早く儲けよう」という発想にもなりかねません。

大阪経済の強みは、製造業と卸業、そして多様性です。製造と流通・販売が近く、非常にスピーディーなビジネスが可能なのが特長です。そのため、関西では繊維分野や製紙業など、全国的に見ても発展を遂げた産業が多くあります。

その強みを現代でも生かしていくべきですが、お上のプロジェクトで儲けるのが当たり前になれば、自分たちで工夫して商売をしていくのが面倒になり、大阪商人ならではのフロンティア・スピリットや企業家精神が失われてしまうのではないでしょうか。

「助けられる人」を育てる

数森圭吾氏とは定期的に大阪で講演会を開催。

今、政府は「全世代型社会保障」を打ち出して教育無償化などを行っており、社会保障の空気が日本全体を覆っています。

もちろん、どうしても働けないなど、さまざまな事情で本当にお困りの方に手を差し伸べることは大切です。しかし今の社会保障政策は、自分の足で歩ける人を無理やり車に乗せて、「目的地まで連れていってあげます」という形です。

これでは、だんだんと足腰が弱り、歩くこともできなくなってしまいます。そして、そのようなお金の使い方をしたら、財源が足りなくなることは必至です。

特に危機感を覚えるのが、「自国の通貨が発行できる国は、極端なインフレなどにならない限り、どれだけ通貨を発行しても大丈夫」などという学説が提唱され、一定の支持を集めていることです。大量にお金を刷ってばらまき、社会保障をさらに増大させようという考え方が蔓延し始めています。これは非常に怖いことです。

本当に困っている方を助けるには、助けられる余裕がある人がたくさんいなければいけません。この「助けられる人」を多く育てるという発想が、今の日本には失われつつあることを強く感じます。

大阪の「自由」で日本を牽引

10月下旬、幸福実現党地方議員団有志で台湾を訪問。「新台湾国策智庫」李明峻研究長に話を聞いた(関連記事60ページ)。

政府は社会保障という名目でバラマキを続けるのではなく、「助けられる人」を育てなければいけません。そのために必要なのは、かつての大阪に見られたような「自由」です。

具体的な例を挙げれば、税金を下げることです。今年2月、中小企業庁が、今後10年間で70歳を超える中小や小規模事業経営者約245万人のおよそ半数が後継者未定で、このままでは約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われる可能性があると発表しています。消費増税や相続税、贈与税などが経営者を圧迫し、承継"できない"のが実情でしょう。

それらを合わせた税収よりも、失われる22兆円のほうがよほど大きな影響を及ぼします。減税と規制緩和を行うことで、中小企業が自由な経営で利益を上げ、次世代につないでいく。そうすれば結果的に税収も上がり、本当に困っている人を助けることができます。これが、「騎士道精神に基づく福祉」ではないでしょうか。

大阪をはじめとする関西には、持ち前の自由性を発揮して、日本全体を牽引する使命があると思います。日本の中心に位置し、陸運・海運も発達して、人が集まりやすいという地の利を活かし、例えば経済特区のような条例で企業の誘致もできるでしょう。

海外に出ている企業を大阪に呼び、雇用創出などに貢献すれば税金を優遇するなど、方法はたくさんあります。日本へのUターンを大阪で支援するのです。IRや海外からの旅行客の消費に頼りすぎず、地に足の着いた発展を目指すことが、長期的な大阪の繁栄につながります。