写真:新華社/アフロ

2019年12月号記事

編集長コラム Monthly  Column

2020年代 中国に勝つ「兵法」

2017年のトランプ政権発足後、 「米中冷戦」が始まっているが、2020年代、どう展開していくのだろうか。

中国は「弱者」から「強者」へ

中国は「建国の父」の毛沢東の時代から一貫して、「アメリカを超える」プランを実行してきた。毛沢東は「アメリカに侮られない国」をつくるために、早くから核・ミサイル開発に国の資源を集中。それが一定の成果を上げると、後を継いだトウ小平が経済の「改革開放」を打ち出し、アメリカなどで稼いだ資金で核兵器以外の通常兵力を整えていった。

近年は、アジアやヨーロッパなどを中国経済圏に取り込む「一帯一路」のほか、外交・メディア・サイバー空間の力を駆使し、軍事力を行使しなくても相手に勝つ「超限戦」を仕掛ける。

中国の十八番の「兵法」で見ると、核兵器保有によって、「これさえ持てば他国に攻められない」という「負けない戦い」ができる。通常兵力の整備は、アメリカに「勝つべくして勝つ」ためのもの。「一帯一路」「超限戦」は、「戦わずして勝つ」戦略だ。

中国はこのように、「弱者の兵法」から始めて一つひとつ積み上げ、「強者の兵法」を使えるまでになった。

トランプが40年ぶりに大転換

一方のアメリカは、1970年代のトウ小平時代から中国経済を助け、先端技術を与えてきた。「中国が経済成長すれば民主化する」という期待からだったが、トランプ政権は「中国にだまされていた」と約40年ぶりにスタンスを大転換。

中国に「勝つべくして勝つ」ために、中国が優位に立ったとされる中距離ミサイルや宇宙軍、サイバー分野で再逆転できるよう米軍再建を進める。そして「戦わずして勝つ」ために貿易・経済戦争を仕掛け、共産党政権を倒すことを視野に入れる。

現在は、米ソ冷戦末期の80年代と同様、大国間の「世界大戦」が繰り広げられており、2020年代に突入しようとしている。

「兵法」の5つの柱

残念ながら日本人には、「大戦」のさなかにあるという自覚は薄いようだ。

日本の認識や行動を「兵法」から見ると、どうなるか。有名な「孫子の兵法」もさまざまな解釈がある。あえて柱を立て、以下の5つをもとに考えてみたい。

(1)戦いにあたっては「大義名分を立てる」必要がある。神仏がどちらに付き、正義がどこにあるのかを明らかにする。(2)孫子が「敵を知り、己を知らば、百戦殆うからず」と言ったように、情勢や彼我の戦力の分析など「情報力」が欠かせない。

その上で、(3)でき得るならば「戦わずして勝つ」戦略をとりたい。中国の「超限戦」、アメリカの貿易・経済戦争はまさにそれだが、軍事的には有力国との同盟が最も重要となる。(4)トランプ氏が米軍を再建しているように「勝つべくして勝つ」体制をつくり出す。(5)「弱者の兵法」として「負けない戦い」をする。一時的な撤退もしつつ、勝機をうかがう(*)。

(*)大川隆法著『ダイナマイト思考』『リーダーに贈る「必勝の戦略」』など参照。

兵法の五つの柱

一 大義名分を立てる、二 敵を知り、己を知る情報力、三 戦わずして勝つ、四 勝つべくして勝つ、五 負けない戦い

心許ない日本の「兵法」

日本の「兵法」は心許ない。

(1) 対中国で「大義名分」を立てていない。トランプ政権は経済では米中で市場を分断し、軍事でも対決するが、日本は経済で中国とがっちり組み、軍事でアメリカに依存する「二股」方式だ。

(2)「情報力」以前に、中国の軍事力が日本をはるかに越えていても、見て見ぬふりをする。

(3)「戦わずして勝つ」ためにはアメリカとの同盟が絶対不可欠だが、アメリカが本当に日本のために戦うかは最後まで分からない。中国が借金漬けにするアジア・アフリカの国々に対し、安倍政権は日本の資金に借り換えさせ、インフラ整備などを推進している。これは「一帯一路」潰しになり、「戦わずして勝つ」道筋だが、"単品メニュー"でインパクトが十分ではない。

(4)「勝つべくして勝つ」に関しては、対中国で防衛力を整備すること自体、諦めている面がある。中国の軍事費は公表分だけでこの30年で50倍増。日本の防衛費は同期間、ほとんど横ばいで中国のわずか4分の1になった。

(5)「負けない戦い」は、毛沢東がしたように核を持って「侮られない国になる」ことだが、中国による世論工作もあって日本人には「核アレルギー」が根深く、議論すら成り立たない。

日本は目の前で展開される「大戦」とは、「異次元空間」にいるかのようだ。

宗教パワーによる「兵法」

幸福の科学の大川隆法総裁は、この「異次元空間」を打ち破ろうとしてきた。

(1)これまで中国の共産党政権の指導部が悪魔的な存在に影響を受け、国民の人権を弾圧し、世界支配を目指していることを明らかにしてきた。

10月にはカナダ・トロントで説法。帰国後の英語説法"Master Okawa's Answers to Canadian activists"で、「 私は中国の全体主義体制を2020年から2030年までの間に終わらせます 」と明言した。日本から「大義名分」を発信し、世界中にいる中国民主活動家らを勇気づけている。

(2)「敵を知るための情報戦」では、大川総裁が次々と習近平氏ら最高指導者の「意図」を公開霊言で明らかにし、ジャーナリストや政治家に判断材料を提供してきた。

(3)今回のカナダもそうだが、大川総裁は各国で説法を重ね、中国包囲網づくりに力を注いできた。インド、ネパール、スリランカ、マレーシア、フィリピン、オーストラリア、台湾、そしてアメリカなどでの総裁の説法の後、親中政権が反中政権に代わり、「戦わずして勝つ」体制が形づくられつつある。

その延長にトランプ政権の貿易・経済戦争はあり、中国が30年以上、アメリカ市場に製品を売って稼いできた経済構造を壊そうとしている。中国の民間企業と家庭の債務はGDP(国内総生産)の2倍を超え、日本のバブル期と同レベルとなった。アメリカで十分儲けられなくなれば、資金が回らなくなり、日本の90年代以降のような企業への貸しはがしや貸し渋り、金融危機、銀行淘汰が立て続けに起こる。

それは、日本がアメリカによる貿易・経済戦争に"参戦"するかどうかにかかっている。このあたりになると、幸福の科学の宗教パワーに加えて、幸福実現党などの現実的な政治の力が必要となってくる。

大川総裁が説法した国は「反中国」に転換

  • 台湾 :蔡英文政権が誕生。中国の「一国二制度」を拒否。アメリカとの「同盟」を強化。

  • インド :モディ首相が中国の脅威に対処するため日米との連携を強化。

  • 香港 :2014年の「雨傘革命」に続き、2019年も香港市民の民主化を求める運動が活発化。

  • フィリピン :ドゥテルテ大統領が誕生。同氏は中国の南シナ海侵略に対し、米比同盟の発動を要請。

  • マレーシア :マハティール政権が誕生し、中国のインフラ投資計画を大幅に見直した。

  • スリランカ :親中の大統領が選挙で敗れ、新大統領は中国の「債務の罠」脱却を模索。

  • オーストラリア :中国からの投資や影響力の拡大にブレーキをかけ、アメリカ寄りに転換。

「勝つべくして勝つ」には

軍事的には日米同盟をどう機能させるかが最重要だ。アメリカは今年5月、海兵隊や陸軍を南西諸島を含む第一列島線に展開し、中国軍との「接近戦」を覚悟する「海洋圧迫戦略」を発表。これまで米軍は、中国との戦時にいったんグアムまで撤退し、おもむろに反撃に出るという腰の引けたプランだったので、トランプ政権は「退かない」戦い方を決めたことになる。

(4)日本は、アメリカがこの戦略を実行する条件をつくり出さなければならない。日本単独でも戦い続けられる防衛力を整備し、アメリカが「日本がそこまでやるなら」と助太刀する関係をつくる必要がある。それが日本としての「勝つべくして勝つ」戦略だ。詳細は省くが、自衛隊単独でも中国軍の艦艇やミサイルを東シナ海の内側で跳ね返すぐらいの戦力が求められる。

(5)「負けない戦い」はやはり核装備が重要で、中国の意思に簡単に屈しなくて済む。日本は石油輸入を止められただけで中国に服従させられるので、エネルギー確保のため、原発推進も不可欠だ。これができなければ、日本は、中東諸国で見られるようなゲリラ戦を展開するしかなくなる。

日中再逆転へのマネジメント

現代における「兵法」は、企業などの組織を動かす「マネジメント」だとされる。日本の政治指導者は2030年代、日本経済をどうマネジメントしていけばいいのか。

大川総裁は先の法話"Master Okawa's Answers to Canadian activists"で、こう述べた。

私たちは、日本の経済成長のために次の戦略を立てなければなりません。そして、再び世界第二位の経済レベルを取り戻さなければならないのです。そのときが、中国共産党一党体制の終わりです

現実には日本のGDPは25年間、約500兆円からほとんど増えておらず、世界経済に占めるシェアも1980年代の約10%から半減した。つまり、世界は2倍成長したが、日本は足踏みを続けたことになる。

中国のGDPを再び超えるには、少なくとも日本のGDPを3倍にする必要がある。政府の「マネージャー(首相)」はどう考え、手を打つべきだろうか。

まずは「大義名分」だが、日本経済が世界に提供できる「特有の使命」を明らかにしなければならない。途上国を借金漬けにして領土を奪う中国の「略奪経済」とは対照的に、人材を育て共に繁栄する二宮尊徳的な精神と手法が日本モデルと言える。安倍晋三首相もアフリカなどへの経済支援で「人を育てる」ことを強調し始めている。

日本の黄金期を開く

「マネジメントの父」ドラッカーは、「企業の目的は顧客の創造にあり、そのためにはマーケティングとイノベーションによって顧客の満足を生み出すしかない」と指摘した。

マーケティングは、市場内のポジション、自社の強み・弱みなどを見極めること。「敵を知り、己を知る情報力」にあたる。イノベーションは、顧客が未来において求めるものを探究すること。「戦わずして勝つ」「勝つべくして勝つ」ための要因をつくり出すことができる。

この二つをもとに考えると、日本の製品の多くは新興国が同じようなものより安く提供しており、競り負ける分野が増えてきた。先進国として「今まで見たことがなく、新興国が真似できない」製品を創り出さなければ、日本は没落していくしかなくなる。

日本のマネージャーは、そのために政府の資金を積極的に使い、制度を変革する責任がある。米アップル社の創業者スティーブ・ジョブズのような「奇人・変人」の企業家がどれだけ活躍できるかがカギになる。それには、思い切った減税と規制緩和、教育の改革が必要だ。

2020年代、世界の人々の自由を奪う中国の支配が広がるか、日本が世界の平和と繁栄を創るゴールデン・エイジを拓くか。日本の「兵法」と「マネジメント」にかかっている。

(綾織次郎)

日本経済をどう「マネジメント」するか

一、大義名分

アジア・アフリカで人を育て、共に繁栄する使命

二、情報力

三、戦わずして勝つ

四、勝つべくして勝つ

新興国が真似できない製品を創り出すためのマーケティングとイノベーション

日中GDP再逆転