写真:AP/ アフロ

2019年11月号記事

マスコミが報じない

香港革命

香港デモ、いや、もはや「香港革命」と呼ぶべきだろう。
「逃亡犯条例」改正案の審議をきっかけに燃え上がり、時には人口の4分の1を超える200万人が参加した。
改正案が撤回されても勢いは衰えず、世界からは、支援の声と「暴徒」との非難が入り混じる。
いったい、何が起きている?
そして、日本に何ができる?


contents


現地ルポ Part 1

「日本人よ、助けてください」

デモ隊と警察の衝突や催涙弾が飛び交うテレビのニュースでは分からない、
香港の人々の「感情」を知りたくて、蒸し暑い香港の街をさまよい歩いた。

(編集部 馬場光太郎)

取材中、日本人に向けて書いてもらった、香港の若者のメッセージ。

「ここは北朝鮮か……」。思わずそうつぶやいた。

軽い気持ちで何人かのデモ参加者に取材をお願いした。取材場所は人目につかないホテルの一室。だが、ほとんどの人は、カメラはおろか、公表しないメモ代わりの録音さえもNGだった。

「数年前は、顔を隠さなくてよかった」と、20代女性のAさん。

しかし、街の監視カメラから中国本土にデータを送れるチップが出てきたり、記者に扮した警察がデモ参加者の顔を撮影したりと、人々が不安を感じる出来事が相次いだという。

「(一斉逮捕などを)いつやるかということだけですね。もう準備は整っているので。みんなが最近、異常に怯えてしまって」(Aさん)

道を埋め尽くすデモ隊は、一見、威勢よく見える。しかし、そんな彼らに何も考えずカメラを向けると、誰もがとっさにうつむいた。通りすがりの大人に「怖がるからやめてくれ!」と怒られた。彼らは水を飲む時も、マスクをつまんで隙間を開け、ペットボトルの飲み口を差し込んで飲む。

市民が手をつなぎ、抗議運動の連帯と決意を示す「人間の鎖」。写真:ロイター/ アフロ。