2019年9月号記事

開戦前夜のアメリカ・イスラエル VS. イラン

イランは本当に「悪」なのか?

アメリカとイランは一触即発の状態だ。トランプ米政権はイラン攻撃も辞さない構えを見せている。

イラン情勢をどのように見ればよいのか。

(編集部 長華子、山本泉)

アメリカとイランの対立がエスカレートしている。

イランがアメリカの無人偵察機を撃ち落としたとして、トランプ大統領が攻撃を命令。実行10分前に中止されたが、いつ偶発的な紛争が起きてもおかしくない(7月19日時点)。

アメリカの核合意離脱が原因

イランでは女性の権利が守られていないとされているが、女性の高学歴化が進んでいる。写真提供:在東京イラン・イスラム共和国大使館。

対立の原因は、アメリカの「イラン核合意」からの離脱だ。

オバマ前政権下の2015年、イランと米英仏独中露は、イランへの制裁緩和の見返りに、核兵器の原料となるウランの濃縮活動を制限することで合意。濃縮度が、核兵器使用レベルになるまで1年以上要するように設定した。

しかしトランプ政権は、「15年間を過ぎたら核開発が可能となる合意には欠陥がある」として18年5月に核合意から離脱。その上で、ミサイル開発の停止、レバノンのヒズボラなどの武装組織への支援停止をはじめとする、12項目の要求リストをイランに突きつけた。この項目を含んだ新たな合意を結ぶため、イランへの経済制裁も再開した。

こうしたアメリカの姿勢に、当然イラン側は反発。「圧力の下での交渉はしない」と、制裁解除を対話の条件としている。7月8日には、核合意の基準を超えた濃縮ウラン製造を始めたことを表明した。これを受けてトランプ大統領は「イランは気をつけたほうがいい」と強くけん制した。

ここに長年イランと対立しているイスラエルも口を挟む。ネタニヤフ首相は「(ウラン濃縮は)核兵器製造の準備」だとして、英仏独3カ国に、対イラン制裁強化に踏み切るように要請した。

イランは核兵器保有の意図を否定しながらも、今後もアメリカの出方次第で、ウランの濃縮度を高める遠心分離機の稼動数を増やすとしている。

この情勢をどう見たらよいか。3人の専門家に聞いた。

次ページからのポイント

外交評論家 加瀬英明氏インタビュー

現代イスラム研究センター理事長 宮田律氏インタビュー

米ジョージタウン大学教授 ジョン・ルイス・エスポジット氏インタビュー