日本のアクション・プランを提案したデービッド・マタス氏。
《本記事のポイント》
- カナダの弁護士が、中国の臓器移植問題をめぐる「日本のアクション・プラン」を提案
- その内容は、海外での臓器移植法の適用、渡航移植の報告の義務付けなど
- 日本政府は、中国の人権弾圧について声を上げるべき
中国では、強制収容所に収監した法輪功学習者やウイグル人イスラム教徒、キリスト教徒などから、強制的に臓器を摘出し、臓器を売買するという"恐ろしい犯罪"が行われている。
英ロンドンで6月下旬に開かれた「中国臓器狩り問題に関する民衆法廷」で、「中国は人道に対する罪で有罪」という判決が下されたばかりだ。
この問題を10年以上調査してきたカナダ人弁護士のデービッド・マタス氏は、「日本のための行動計画(アクション・プラン)」として、12項目を提案している。(詳細は関連サイトを参照)
海外でも臓器移植法が適用されるようにする
日本の臓器移植法では、臓器売買やその斡旋・仲介は禁じられている。しかし、同法の及ぶ範囲には限界があり、日本国内で行えば罰せられる行為が、国外で行った場合は罰せられない。
マタス氏は、「日本国民だけでなく、日本永住者や日本を訪問した人も、日本国外で臓器移植法に違反した行為を行った場合、同法が適用されるように法改正するべきだ。また、現在の法律では明示されていない斡旋や仲介にも、適用がなされるような改正が必要だ」と指摘している。
医療機関に対し、渡航移植を報告するよう義務付ける
現在、日本の医療機関は、海外で臓器移植を行った患者の存在を認識しても、どこにも報告する必要はない。マタス氏は「医療機関は、国の機関に渡航移植の報告をするよう、法律で定めるべきだ」と指摘する。
臓器移植を受けた患者は術後のケアを必要とするため、医療機関は患者が渡航移植をした場合、そのことを認識しているはず。現在、渡航移植の件数さえ把握していない状況なので、厚生労働省などの国の機関が件数を把握するだけでも一歩前進だという。
不当な臓器移植に加担する者は入国拒否
マタス氏は、「不当な臓器移植に加担する者は、日本に滞在するためのビザの発給と入国を禁止すべきだ」と指摘する。
また、ビザもしくは入国を申請した人に、「不当な臓器移植に関わったことがあるか」を尋ねることも有効だという。たとえ該当したとしても、「はい」と答えることはないだろうが、この質問そのものが入国の抑止力を持つためだ。
人権弾圧した人物の資産を凍結する「マグニツキー法」のような法律を制定
現在、アメリカ、イギリス、カナダ、ラトビア、リトアニア、エストニアの6カ国では、深刻な人権侵害を行った人物の資産を凍結し、入国拒否をできるようにする通称「マグニツキー法」が採用されている。
マタス氏は、日本もマグニツキー法のような法律を制定すべきだと語る。現在のところ、深刻な人権侵害を行った中国の高官に、同法が適用された事例はない。しかしカナダでは、法輪功の学習者を迫害した人物に同法を適用することを求める要請がなされている。
その他、マタス氏は、以下のような提案を行っている。
人体標本展に関する法規を定めるべき
日本移植学会は、現状のものに加えて、新たな倫理基準を採用するべき
国会で、中国臓器移植についての決議を可決するべき
国会の委員会は、不当な臓器移植への加担を防ぐための改善法について、報告書を作成・公表すべき
日本政府は、「臓器売買は人身売買の一部である」とみなす立場を公式に採用すべき
人体臓器の売買を禁止する欧州評議会の国際条約に署名し、批准する
中国政府との二国間対話において、不当な臓器移植をめぐる懸念を伝える
日本政府は、国連人権理事会などの場で、中国の不当な臓器移植をめぐる懸念について表明する
日本は、臓器移植のために中国に渡航することを防ぐための行動を、ほとんど起こしていない。これは、中国の不当な人権弾圧を黙認しているのと同じことだ。日本政府は、マタス氏の提案を受け止め、中国の残虐な臓器売買に声を上げ、対処していく必要がある。
(山本泉)
【関連サイト】
日本のためのアクション・プラン
http://jp.endtransplantabuse.org/2019/07/01/an-action-plan-for-japan/
【関連記事】
2019年6月26日付本欄 英民衆法廷の最終判決「中国臓器狩りは有罪」 日本はリーダー国としての責任を果たせ
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2019年6月号 Expert Interview - 人の命で稼ぐ犯罪国家 中国の「臓器狩り」に加担してはならない
https://the-liberty.com/article/15670/
2019年3月25日付本欄 中国の「臓器狩り」に日本人と厚労省も加担している!?