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《本記事のポイント》

  • 自衛隊、任官時の職種に「宇宙」を新設
  • 米中の主戦場は宇宙空間へ
  • 日本独自で宇宙防衛するための技術開発を

防衛省はこのほど、自衛官が任官する時の職種に「宇宙」という項目を新たにつくる。25日付朝日新聞電子版が報じた。自衛隊の宇宙領域における防衛力強化に対応する動きだ。

同省は2022年度までに、「宇宙領域専門部隊を発足」させる。23年度からの本格運用を目指す。

部隊の中心的な任務は、情報収集だ。人工衛星の脅威となる宇宙ゴミや、他国の人工衛星の動向を監視する。山口県に高性能レーダーを設置し、東京都の府中基地で情報を集約する。

また、その情報は米軍とも共有するため、連絡官を米軍基地に派遣し、常駐させる。そうした要員として、同省は宇宙分野の専門人材を募集し、その育成に取り組む方針だ。

米中の主戦場は宇宙空間

軍事において、宇宙領域、特に人工衛星の重要性は飛躍的に高まっている。ミサイル誘導や情報収集を大きく左右するためだ。

特にアメリカのトランプ大統領は2018年、「宇宙軍」を創設する大統領令に署名。今年2月には関連法案の作成を指示した。「宇宙軍創設を国家安全保障の優先課題に掲げている」とし、2020年までの創設を目指している。

中国も、宇宙開発に力を入れている。「軍民一体」を国家戦略として技術開発に取り組んでおり、アメリカの衛星に近づき妨害行為をする「キラー衛星」を開発している。また、2022年からは独自の宇宙ステーション「天宮」を運用する予定だ。

米中の主戦場は宇宙空間に移りつつある。

日本独自で防衛するための技術開発を

そうしたなか、日本が宇宙領域での防衛力を強化し、米軍との連携を密にすることは、歓迎すべきことだ。

次なる課題としては、日本が取り組むのは、情報収集が中心ということだ。自国の衛星を守ったり、宇宙空間からの攻撃への抑止力を持ったりするための、具体的な手だてはない。

しかし、日米安全保障条約は「日本の領域への攻撃」に日米が共同で対処すると定めており、宇宙空間は対象外となっている。

そのため仮に、日本の衛星が宇宙空間で他国から攻撃を受けた場合、日米安保を適用して米軍が日本を守る可能性は、高いとは言えない。

日本は、宇宙分野の人材育成と情報収集をしながらも、独自で宇宙空間を防衛することを見据え、技術開発に取り組む必要がある。

(飯田知世)

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