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北京でこのほど、「アジア文明対話大会」が開催された。主催は中国で、全47の国と地域から、約2000人の代表が招かれた。「アジア」と銘打った大会ながら、不思議なことにギリシャなどヨーロッパからも参加していた。

その顔触れは、「一帯一路」を意識したものだろう。しかし中国は、4月25日から27日まで、「一帯一路」国際協力サミットを北京で開催したばかりだ。

世界にアピール、市内は警備

同じような国際会議を次々と開く習近平政権。一見華やかだが、それは共産党政権の苦境とごまかしの産物に過ぎない。

会議乱発の背景には、「米中貿易戦争」で追い込まれるなか、「『一帯一路』構想に勢いがある」ことを国際社会にアピールする狙いがある。

国際会議には「国内対策」の面もある。2019年は「5・4運動」から100周年、「6・4天安門事件」から30周年の節目。民主化を訴える"集団的騒乱事件"が予想される。習政権としては、この5月と6月を何事もなく、無事に過ごすため、警備の厳しい国際的イベントを乱発している可能性もある。

さらに、習主席自身が、国際会議に若干酔っているふしもある。各国の代表団が「朝貢」に見え、あたかも自らが清朝時代の皇帝になったつもりになっているのではないか。

こうした習政権の危機感と見栄が入り混じる「国際会議ラッシュ」だが、当然、巨額の費用が必要で、毎回、数兆円規模を浪費していることになる。

特に、国際会議のたびに「北京ブルー」を演出しなければならない。各国の代表団やメディアが来るにもかかわらず、北京がMP2.5に代表される大気汚染で曇っていれば、習政権は面子丸つぶれである。

そのため当局は、北京市内(おそらく北京を取り囲む河北省も)の工場を最低1週間程度、創業停止にする。また北京市内では、排ガス対策のため、自動車の台数も規制する。場合によっては、市内の会社や学校も休みにし、地下鉄も走らせない。

メッセージも矛盾

ここまでしてようやく演出できる「北京ブルー」だが、代償として不況はますます深刻化する。

「アジア文明対話大会」で、習主席が発信したメッセージも、矛盾に満ちていた。

「他の文明を改造したり、取って代わろうとしたりするのは愚かだ」「文明の交流は強制や脅迫ではいけない」

これは、貿易戦争で経済政策を変えるよう圧力をかけ、「一帯一路」を非難するアメリカを念頭に置いた言葉だ。

しかし、「文明の改造が愚か」だというなら、中国共産党が国内で行っている宗教弾圧は一体何なのか。政府はチベットの仏教徒を数多く虐殺し、300万人ともいわれるウイグルのイスラム教徒を再教育キャンプに押し込めている。さらには、各地の仏像を破壊し、教会は取り壊す。

これは「文明の改造」を超えた「破壊」に他ならず、習氏は言っていることと、やっていることが真逆だ。

共産党政権の矛盾を覆い隠すため、嘘と見栄を塗り重ねた「国際会議ラッシュ」だが、いつまでも通用するものではないだろう。

拓殖大学海外事情研究所

澁谷 司

(しぶや・つかさ)1953年、東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学などで非常勤講師を歴任。2004年夏~2005年夏にかけて台湾の明道管理学院(現、明道大学)で教鞭をとる。2011年4月~2014年3月まで拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。現在、拓殖大学海外事情研究所教授。著書に『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界新書)、『2017年から始まる! 「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)など。

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