《本記事のポイント》
- 中国、移植臓器の大半は"囚人"から
- 「臓器狩り」に対して日本ができるアクションプラン
- 日本人の「渡航移植」で"囚人"が殺されている?
中国では、法輪功学習者やウイグル人、キリスト教徒からの臓器狩りが行われている。
臓器移植の件数は、年間6万件から10万件とされ、アメリカの約3倍。目を見張るのは数だけではない。待ち時間も非常に短い。アメリカでは通常、数カ月から数年かかるが、中国では数日から数週間で手に入れることができる。
中国、移植臓器の大半は"囚人"から
こうした大量かつ迅速な臓器入手について、中国政府は当初、「ドナーからの提供だ」と主張してきた。しかし現在は、「移植臓器の大半は囚人から来るものである」と認めている。
だが、殺人などの犯罪を犯した囚人だけではないだろう。法輪功学習者やウイグル人などの強制収容所における"囚人"も含めなければ、これだけ多くの臓器移植を行うのは不可能だ。つまり思想・信条の"罪"で自由を奪われた「良心の囚人」から、臓器は摘出されている可能性が極めて高い。
10年以上にわたるある調査では、臓器移植希望者と条件が合致する法輪功学習者やウイグル人を見つけ、中国がオンデマンドで(需要に応じて)殺し、臓器を摘出していることが判明してきている。
「臓器狩り」問題に取り組む人権弁護士が来日
国際人権弁護士
デービッド・マタス
プロフィール
カナダ生まれ。国連総会カナダ代表のメンバー、国際人権と民主発展センター長、カナダ憲法・国際法律条例主席などを歴任。2010年ノーベル平和賞候補、2017年ガンジー平和賞候補。
この問題について長年取り組んできた国際人権弁護士のデービッド・マタス氏がカナダから来日し23日、都内で講演を行った。
2006年、マタス氏のもとに「法輪功学習者が臓器摘出後、殺害され、遺体が焼却されたケースについて、信ぴょう性を調査してほしい」という依頼が舞い込んだことからすべてが始まった。
ユダヤ系カナダ人のマタス氏は、若い頃にホロコーストの悲惨さを目の当たりにし、人権活動に取り組む決意をした。
マタス氏は、世界各国でこの問題を提起し、国際世論を形成しつづけている。
その一つが、昨年12月にイギリスで行った「民衆法廷」である。この「民衆法廷」は、旧ユーゴスラビア民衆法廷の議長であったジェフリー卿が議長を務めた。この法廷に、マタス氏も証言者として立った。
判事団は、アメリカの国際刑事法の専門家や、マレーシアやイランの人権弁護士などによって構成される。大量の証拠資料を読み、証言を聞いた上で、今年の6月以降に裁定を下す予定だ。
だが今回は、異例の「中間裁定」が発表された。「本法廷メンバー(判事団)は全員一致をもって、全く疑いの余地なく、中国でかなりの期間、極めて多くの犠牲者に対して、強制臓器収奪が行われてきたことを確信する」と発表している。これも国際世論づくりには大きな一歩となるだろう。
民衆法廷については以下のサイトで見ることができる。
英語原文
邦訳
http://jp.endtransplantabuse.org
「臓器狩り」に対して日本ができるアクションプラン
では、中国で行われている「臓器狩り」に対して、日本は何をすべきか。
マタス氏は講演のなかで、行動計画(アクション・プラン)を提案。それはすでに他の国でも行われているもので、日本も国会議員がその気になれば、実現可能なものが多い。
ここではマタス氏の提案の一部を紹介する。
- イスラエルや台湾では、臓器移植を受けるために海外に行く「渡航移植」を禁じる法律が制定されている。「良心の囚人」が殺害されるケースを防ぐためだ。日本には臓器売買やブローカーを罰する法律は存在するが、国内でしか適用されない。日本人が国外に渡って、知らないうちに"犯罪に加担する"ことがないよう、日本も同様の法律を制定するべきである。
- 米国議会や欧州議会、チェコの議会などでは「臓器狩り」についての決議が採択されている。アメリカの決議では、良心の囚人からの臓器摘出について懸念を表明するとともに、法輪功学習者やその他の良心の囚人を、すべて釈放することを要求している。このような決議を日本でも採択すべきである。
- オーストラリアの議会では、臓器狩りについての詳しいレポートを下院外交委員会が作成し対策を提言している。日本も同様のレポートを作成、提言することが必要だ。
- 人権弾圧をしている中国政府高官の資産凍結を行う「マグニツキー法」のような法律を日本でも制定をすべきである。
- 渡航移植が行われた場合は、医療従事者が厚生労働省に対して報告の義務を設けることが必要である。それによって移植者の数を把握し、対策を打つことができるようになる。
日本人の「渡航移植」で"囚人"が殺される?
上記の中で特に重要なのは「渡航移植」だ。
生きている「良心の囚人」から肝臓、腎臓、心臓などが摘出されるという殺害が行われているにもかかわらず、そのような事態が日本人には知らされていないため、臓器移植を求める患者が中国に渡航している。患者は意図せず"殺人行為"に加担してしまっているのだ。
問題なのは厚生労働省が移植渡航に保険適用を認めていることだ。中国の国家ぐるみの犯罪行為に目を瞑り、国民の税金を使って渡航移植を推奨するのは、倫理違反であろう。
講演に登壇したSGMネットワーク代表の加瀬英明氏も、「国会に働きかけ、日本国民がどれだけ渡航しているのか調査させる。その上で渡航を禁ずる措置をとることを目標としている」と述べている。その上で、法輪功、ウイグルの人々への弾圧は、人種平等のために戦った日本人の誇りにかけて、許せない行為であると訴えた。
「臓器狩り」は、人間を「物」とみなす唯物論国家中国の本質を象徴するものだ。これに対し、信仰心のある国家の同盟を強化しようと、米国務省の信教の自由担当のサム・ブラウンバック大使が世界で講演。3月初旬の香港における講演でも、法輪功の人々が殺され臓器狩りの被害者になっているとして中国政府を非難している。
日本も、同胞たちが中国で人権侵害を受けているならば、決して沈黙してはならない。ましてや、渡航移植を保険適用によって加担すべきではない。渡航を禁ずる法律を早急に成立させるとともに、中国に良心の囚人を解放するよう要求すべきである。
(長華子)
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2018年1月27日本欄 中国で急増する臓器移植 その臓器は"無実の囚人"から摘出されている
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2018年4月号 世界の人権活動家たち Interview - 中国の臓器移植は「大量虐殺」で成り立つ