《本記事のポイント》

  • ベトナムは昨年12月より、会談の候補地に名乗りを上げていた
  • 米越関係のように、敵同士である米朝は和解できる
  • ベトナムは会談場所を提供することで、南シナ海で対立する中国をけん制

2回目となる米朝首脳会談が、ベトナム・ハノイで始まった。焦点は、北朝鮮の非核化がどれだけ進捗し、アメリカはどう対応するかだ。

この会談で米朝のどちらが多くの利益を得るのか。それが分かるのには、会談が終わってからしばらく時間を要するだろう。だが、すでに利益を得ている国がある。開催地となったベトナムだ。

実はベトナムは昨年12月より、韓国を通じて、今回の会談の候補地に名乗りを上げていた。27日付読売新聞によると、グエン・スアン・フック首相はこのほど、「ベトナムは、世界の平和に貢献したい。会談の会場に選ばれたことを誇りに思う」と述べたという。

ベトナムが米朝の橋渡し役となり、世界から注目を浴びている。

かつて敵同士だった米越関係

アメリカがベトナムを開催地に選んだ理由は、両国の歴史が大いに関係している。

米国務省のパラディーノ副報道官が、「アメリカとベトナムの歴史は平和と繁栄の可能性を示している」と述べたように、両国はもともと、ベトナム戦争で戦った敵同士だ。しかし、今では友好国へ変わり、ベトナムはアメリカの支援を受け、経済発展を遂げている。

つまり米朝関係も、非核化が実現すれば、現在の米越関係のようになれるというメッセージを発したいわけだ。

トランプ米大統領は北朝鮮の金正恩委員長に対し、前回の会談地となったシンガポールのように、北朝鮮も繁栄できる「未来」を示し、非核化の合意を取り付けた。

実際、トランプ氏は会談前のツイッターで、「ベトナムは地球上で類を見ない繁栄している国の一つだ。北朝鮮がもし非核化すれば、非常に早く同じようになるだろう。私の友、金正恩にとって、過去の歴史にないような、大きなポテンシャルとなり、素晴らしい機会となる。それがどうなるかもうすぐ分かるだろう。非常に楽しみだ」と投稿している。

トランプ氏は前回と同じやり方を踏襲し、"友人"である金氏との交渉に臨んでいるだろう。

ベトナムはアメリカに恩を売る

またベトナムとしては、アメリカを利用したい思惑が見え隠れする。

ベトナムは南シナ海の領有権をめぐって、現在、中国と対立している。南シナ海は、第3次大戦の火種になりかねないほど、米中が神経戦を繰り広げている舞台でもある。米越関係強化の理由も、そうした中国の南シナ海進出が背景にある。

ベトナムは今回、アメリカに恩を売ることで、同国との関係を強化したい狙いがある。

米朝は非核化や人権弾圧などの深刻な課題を抱えながらも、「未来志向」の関係に向けて信頼を深め、非核化の実現を期待したいところだ。

(山本慧)

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