2018年12月号記事
Expert Interview
北海道大停電
真冬に起きたら数十万~100万人が死ぬ
9月の北海道胆振東部地震で、泊原子力発電所を動かさず、
電源を苫東厚真火力発電所に依存していた北海道は、全域で停電した。
同じことが真冬に起きればどうなるか。専門家に聞いた。
(聞き手 馬場光太郎)
9月の地震で停電した札幌市の狸小路。写真:AP/アフロ
札幌医科大学教授
高田 純
プロフィール
(たかだ・じゅん)理学博士。弘前大学理学部物理学科卒業後、シカゴ大学ジェームス・フランク研究所、広島大学原爆放射線医科学研究所などを経て、現職。著書に『放射能・原発、これだけ知れば怖くない!』(幸福の科学出版)など多数。
北海道地震による大規模停電では、札幌市内に住む私もロウソクで一夜を過ごし、39時間も電気なし。信号も物流も止まり、病院では酸素呼吸器をつけた乳児が重症になるなど、人命も危険にさらされました。私たち道民は、電気が生活のすべてを支えていることを実感したのです。
しかし停電が起きた9月は1年の中でも温暖で、電力使用量も少ない時期でした。もし真冬の12~2月に、再び震度6以上の地震が起き、苫東厚真火力発電所が停止し、全道が電源喪失したらどうなるか。各種統計からの推計で、数十万から100万人規模の死亡者が出ることが浮かび上がってきました(*1)。
(*1)詳細な試算は現在、論文投稿中。
「6割節電」で道内は極寒に
まず 12月から2月の電気使用量は、9月に比べて平均値で4割も増えます (*2)。そこから推定すると、9月の事故では道民に2割の節電が9日間課せられましたが、真冬には6割の節電が課せられるはずです。節電といっても、「この地域は、この時間帯に停電する」という計画停電になるでしょう。
すると多くの地域で、エアコンは止まり、ストーブもファンが動きません。 1月の最低気温は氷点下(℃)で、札幌7、帯広14。室内も氷点下です。家が崩れた被災者は寒い避難所生活。 電力の復旧や救助活動も雪で遅れ、病院の予備電源も底をつきます。
そんな極寒の中、持病のある方や高齢者、乳幼児は命の危険にさらされます。