泊発電所(画像は Wikipedia より)

《本記事のポイント》

  • 原発差し止め訴訟に支援もしていたコープが、停電の損害賠償を北電に請求!?
  • 脱原発派の理屈は「北電は原発に固執して火力建設が遅れた」
  • 「原発稼動リスク」を北電に問い、「原発停止リスク」は北電に押し付け

地震に伴う大規模停電で約9億6000万円の損害を受けたとして、コープさっぽろが、北海道電力に損害賠償の請求を検討していた。

コープさっぽろは、停電によって道内店舗の冷蔵庫・冷凍庫に保管されていた生鮮食品などを廃棄せざるを得なくなった。その原因は、北海道電力が苫東厚真火力発電所に電源を一極集中させていたことにあると判断したという。

6日の理事会で請求検討を求める声が出たと報じられたが、9日までに見送られたという。各紙が報じている。

コープは原発差し止め訴訟に支援も

今回の件で波紋を呼んだのは、コープが「脱原発」を強く訴えてきたことだ。

コープは政府や関係省庁などに「原子力発電に頼らないエネルギー政策への転換」といった提言をしてきた。コープさっぽろも、北海道庁に脱原発を求める要請文を渡し、青森県の大間原発の建設差し止め訴訟への支援金を寄付するなどしている。店舗のカウンターに、募金箱なども設置していた。

しかし今回、苫東厚真火力発電所に電源を依存していた状態は、他でもない、泊原発が停止していたことが原因だ。ネット上では「こういうのをダブルスタンダードって言うんだよ」「自業自得じゃね」といった指摘も見られた。

似たような姿勢は、北海道庁にも見られた。高橋はるみ北海道知事は、原発再稼動に対して慎重姿勢であり、北電に「原子力規制委員会の審査に対し真摯に対応すること」などを申し入れていた。しかし今回の大停電を受けて、「北海道電力の責任は極めて重い」とコメントした。

脱原発派が唱える「原発固執」論

脱原発を訴える勢力が、原発不在が招いた停電については北電を責める。いったい、どのような理屈なのだろうか。

脱原発を訴える日本共産党の機関紙「赤旗」は、「全道停電(ブラックアウト) 背景に原発固執」との見出しで、今回の停電と脱原発を結びつけている(9月16日付)。つまり、北電は泊原発の再稼動に「固執」するあまり、計画していた液化天然ガス(LNG)の導入を遅らせてしまった。それにより、「一極集中の電力供給を続けた」というのだ。

毎日新聞も「北海道大停電 原発依存が招いた"人災"」との見出しで報じ、「北電は原発にのめり込んで(LNGなどへの)設備投資を怠ってきた」と断じている(9月12日付朝刊)。

脱原発派による今回の停電の"消化"の仕方は、概ね共通しているだろう。

とっくに再稼動できていた泊原発

しかし、北電が泊原発再稼動を目指してきたことは、決して「固執」「のめり込んで」と言われるべきものではない。

泊原発は原子力規制委員会による審査が行われていたが、そのほとんどは完了しており、とっくに再稼動していてもおかしくはなかった。しかしその後、規制委は「敷地内の断層が12万~13万年前以降に動いていないことを証明せよ」といった無理難題を北電に課す。

「12~13万年以降に動いていれば、また動く可能性のある『活断層』だ」ということなのだが、そもそも原発の寿命は40年かそこらだ。微小なリスクに「固執」している間に、実際に停電というトラブルが起き、医療機関などでは人命が危険にさらされてしまった。

「原発稼動リスクに敏感」で「原発停止リスクに無頓着」という構造

政府はこうした規制委の「ゼロリスク」だけを追求する審査を、いわば放任してきた。そして、原発が止まっていることによる「リスク」を、現実のものにしてしまった。さらにその責めを、北電に負わせるような雰囲気になっている。

こうした、政府が「原発を動かすリスク」だけに敏感になり、「原発を動かさないリスク」に無頓着になれるような構造は、冷静な判断を遠ざける。

政府は、一連の損害を自分たちの責任と考えるべきだ。その上で多角的なリスクを総合して考え、泊原発の稼動を急がせるべきだ。

(馬場光太郎)

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