18歳以下の子供たちの自殺が急増するのが、夏休み明けと言われる。

夏休みが終わり、二学期が始まる際、学校でのいじめをはじめ、友人や先生との人間関係、進学など、さまざまなプレッシャーを抱える子供たちが自ら命を絶つ。

こうした悲劇を失くすために、8月下旬から9月上旬にかけて全国の学校で二学期がスタートするこの時期に、改めて「いじめ問題」について考えたい。

今回紹介するのは、いじめ問題の相談・解決に取り組み、全国の学校などで講演も行っている一般財団法人「いじめから子供を守ろうネットワーク」の井澤一明代表による連載「いじめは必ず解決できる」。

(※本連載は、2011年~14年にかけて本誌で20回以上にわたり、井澤代表に執筆いただいた内容。今回紹介するのは、その第1回と第2回。本文中の情報は当時のもの)

井澤一明

(いざわ・かずあき)6年間で4000件以上のいじめ相談を受け、いじめ解決の専門家として各地の学校などでの講演やTV出演で活躍中。

いじめから子供を守ろう!ネットワーク公式サイトはこちらでご覧になれます。

http://mamoro.org/

いじめは犯罪!絶対にゆるさない!

いじめは犯罪!絶対にゆるさない!

井澤 一明著

SEIRINDO BOOKS

相談窓口

一般財団法人いじめから子供を守ろうネットワーク

電話:03-5544-8989 ( ※連載掲載時とは変わっています )

FAX :03-5797-7479

e-mail : kodomo@mamoro.org

【第1回】

小5の娘が学校でいじめにあっています。担任の先生からクラスの子供たちに注意してもらいましたが、止まりません。担任は、「学校は犯人さがしをするところではありませんから、様子を見ましょう」と言うだけです。どうしたらいいでしょうか。

(静岡県・40代女性)

答:いじめは一日で解決できる

このようなご相談が毎日毎日届いています。学校側にいじめ解決を依頼しても、「いじめは簡単には解決しないものです」「どちらが悪いと決めつけてしまうのは危険です」などと言われることも多く、実際の解決に時間がかかる事案が大半です。

「いじめは一日では解決しない」というのが学校の常識になっています。しかし、それは間違いです。言い訳にすぎません。

その論拠をあげてみます。

『泥だらけの制服』(楽しんご著)という本が最近出版されました。著者は、中学時代にいじめに悩み、自殺まで図ったほどでしたが、いじめを発見した担任の先生が、不良たちに立ち向かってくれたのです。「僕の地獄の日々は、たった一日で終わった」と、楽しんごさんは書いています。

ある校長先生は私に、「いじめや暴力行為は、校長である私の責任です。徹夜してでも解決しなければならないんですよ。早期発見、早期解決なんです。一日ですよ。一日で終わりにするようにしています」と熱く語ってくれました。

中2男子生徒のいじめも一日で解決しました。「今、クラスの子からいじめられている」と電話をもらい、親に知られるのはいやだと家の電話番号は教えてもらえませんでしたが、学校名と担任の先生の名前を教えてもらえたので、私が学校に電話をしました。担任は女性の先生で、「すぐに本人を呼んで事情を聞きます」と答えてくれました。

次の日の夜、その子に確認したところ「先生と話したら、いじめている子たちも呼ばれて、いじめも終わった」とのことで、ホッとしている様子が伝わってきました。担任の先生からも「ご連絡いただいてありがとうございました。今日、対応して大丈夫だと思いますが、また問題があるようでしたらご連絡ください」と丁寧な対応でした。

いじめている子を正しく叱ることがいじめの解決に

いじめは一日で解決できます。学校の先生に、「いじめは許さない」という強い決意があれば解決できるのです。

いじめの解決方法は、いじめている子供たちを正しく叱ることです。そして、いじめた子に「悪いことをした。謝りたい」という心を持たせてあげることです。これだけです。

叱る際のポイントは、いじめは「悪い」ことだと教えることと、いじめられている子のつらさを理解させること、つまり自分がいじめられたらどうなのか感じさせることです。そして二度といじめをしないと約束させることです。

保護者の皆様、「いじめは一日で解決できる」ことを知ってください。いじめが起きたら、このことを基準に考えてみてください。それが子供を守ることにつながります。

【第2回】

中2の息子は、部活でいじめにあって不登校になりました。私も小中学校時代はいじめられていましたが、不登校にはなりませんでした。「今のいじめは昔と違う」とも聞きますが、こんなに簡単に不登校になるものでしょうか。

(広島県・40代・パート主婦)

今のいじめは大人が介入しないと解決できない

マスコミからいじめについて取材を受ける時、必ず聞かれることが「今のいじめと昔のいじめは違うんですか」という質問です。

今回の相談者も、いじめは「ガキ大将」、つまりジャイアンのような子をイメージしているようです(仲間はずれ、たたく、ケンカをするだけではなく、優しさやリーダーシップも持ちながら友達関係を築いているというイメージ)。

しかし、今のいじめでは、学校に通えなくなるどころか、心療内科、精神科に通院する子や、自殺する子さえいます。

今のいじめ三つの特徴

今のいじめの大きな特徴の一つ目は、今の学校では「いじめは当たり前」だということです。国立教育政策研究所の調査(2010年7月発表)では、小中の9年間で9割の子はいじめられた経験といじめた経験の両方があるという結果が出ています。極端な数字という方もいますが、他の調査結果を調べても最低でも2人に1人はいじめ経験があるのが現実です。

二つ目は、いじめは「言葉と無視」が大半だということです。「死ね」「ウザイ」「きもい」「むかつく」。そして「にらむ」「無視」「はぶる」。言葉と無視がいじめの87パーセント(注)にものぼるのです。

(注)平成22年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」より

三つ目は、今の子にとっていじめは「遊び」であるということです。昨年の「警察庁少年非行等の概要」で、いじめた理由を77%の子が「面白いから」と答えているのです。子供たちにとって、いじめはゲームと同じなのです。

2011年10月の滋賀県中学生飛び降り自殺の原因は、いじめだったと判明しています。しかし、加害者の子たちは「じゃれあって遊んでいた」と話していると報道されており(中日新聞 2011年11月3日付)、「自分が悪いことをしたと心から悔いている」という姿はそこからは見えません。

結局、人の痛みが分からない子供が爆発的に増えることにより現代のいじめが起きているのです。

子供に善悪を教えるべき

いじめを防ぐためには、私たち大人が、「していいこと、してはいけないこと」という善悪のけじめを教え、「良心に基づいて行動することが大切なんだ」ということを根気強く教えていくことが必要だと感じています。

「証拠がなければいじめてもいい」「いじめられるやつが悪い」と平気で口にするような子に「自分たちで話し合って解決しなさい」と言っても解決できません。

今のいじめは大人が介入しないと解決しないのです。大人が積極的に子供たちに関わっていただきたいと思います。

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