《本記事のポイント》
- 中国で環境規制が強化され、進出している日本のメーカーにも影響が出ている
- 中国では、「基本国策」として環境保護が推し進められている
- 今後も、中国の環境政策の動向を注視する必要がある
中国政府が国内企業への環境規制を強化する中、日本の一部のメーカーが中国での販路を広げている。例えば、帝人株式会社が開発している粉塵フィルターなどがよく売れているという(23日付日経新聞)。
中国政府は昨年、工場から出る粉塵の排出量を30ミリグラムから10ミリグラムにするよう、規制を強化した。そのため中国国内では、工場から排出される有害物質を抑えるフィルターの需要が高まっている。
帝人のように販路を広げる日本企業がある一方で、化学品などの増産に対する投資を当局に拒否されるなど、悪影響を受けている日本企業もある。
中国の環境汚染問題といえば、日本でも話題となった「PM2.5」は記憶に新しい。PM2.5とは、工場や自動車、航空機などから排出される粉塵や煤煙など、直径2.5マイクロメートル(=1ミリメートルの1000分の1)以下の人体に有害な粒子状物質のことだ。
環境汚染問題が深刻化している中国では、改善に力を入れている。日本では、いまだ「汚染大国」としてのイメージが強い中国だが、実際にどのような環境規制が定められているのだろうか。
基本国策としての環境保護の厳しさ
実は、中国は「環境保護」を「一人っ子政策」などと並ぶ「国の基本国策」としており、取り締まりも厳格になってきている。
中国は1989年に環境保護法を制定した後、2014年に大幅な改正を行った。そしてこの法律を基本として、環境規制に関するさまざまな関連法を制定してきた。
「大気汚染防止法」「水汚染防止法」「固体廃棄物環境汚染防止法」「海洋環境保護法」「環境影響評価法」「環境騒音防止法」「クリーナープロダクション促進法」の7つの関連法があり、その他にも行政法規として、何種類もの指針や原則が定められている。
「最強の環境法」の効果で、青い空が戻りつつある?
中国では、省や国などの行政機関が汚染物質の排出基準を決めており、工場や施設の検査を実施している。環境保護法に違反した組織に対しては厳しい罰則が課される。その厳しさゆえに、「中国史上、最強の環境法」と称されている。
例えば、企業が汚染排出の規定に違反し、行政からの業務の中止命令などに従わなかった場合、15日間まで責任者の身柄が拘束される。また、規定に違反して制裁金の処罰を一度受けた後も規定を守らない場合、是正を命じられた翌日から、日割りで制裁金が膨らんでいく日割連続処罰制度も導入されている。
その他にも、当局によって、生産制限や施設の押収、さらには操業停止や工場閉鎖に追い込まれるケースもあるようだ。
実際、取り締まり件数は増加している。2016年1月~11月の期間で、日割連続処罰は798件、差し押さえは2015年に比べて約2倍となる7413件、生産制限・生産停止は4410件、身柄拘束は3274件、犯罪立案は1725件といった具合である(中国・環境保護部が公表した執行状況より)。日本企業も例外ではなく、上海では同期間に約40社が生産停止や罰金などの処分を受けている。
手段を選ばない環境保護の効果だろうか。最近の北京の空は以前に比べ、青さが戻ってきているという。PM2.5対策として、マスクをする人も減っているようだ。
中国の深刻な大気汚染や健康被害などが世界的な問題に発展していたことを考えると、ようやく現状が改善されてきたことは朗報といえるだろう。
ただ、規制を強化するだけでは、改善しきれないものもある。そもそも、中国の環境問題がここまで悪化していた原因は、自社の利益しか考えない自己中心的な経営や、良心の欠如にあったのではないか。
これから中国が日本企業などと協力しながら、環境に優しく品質の高い商品をつくっていく中で、日本伝統の商人の心得である「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」の「三方良し」の精神に目覚めることを望みたい。(中)
【関連記事】
2018年2月15日付本欄 これだけ知っトクNews(2月15日版) 中国の技術移転で、日米欧がWTOに提訴 「経済版・中国包囲網」になりえる
https://the-liberty.com/article/14122/
2018年2月13日付本欄 BBCが新疆ウイグル自治区での現地取材 映像が伝えるリアルな「監視社会」
https://the-liberty.com/article/14117/
2017年6月4日付本欄 トランプ氏、パリ協定離脱 揺らぐ「地球温暖化」説と「炭素全体主義」