長距離巡航ミサイルは、航空自衛隊のF-15にも装備される予定(mTaira / Shutterstock.com)。

《本記事のポイント》

  • 現在の日本のミサイル防衛は「1段構え」に過ぎない
  • イージス・アショアを導入しても、北ミサイルが100発発射されれば、迎撃できるのは約3割
  • 安倍政権の国防政策は「この国を、守り抜けない。」が真実

防衛省はこのほど、2023年度の運用を予定していた陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」を前倒して配備するための調査費と、「長距離巡航ミサイル」を導入するための経費を、2017年度の補正予算案に計上する方針を示した。

趣旨について、小野寺五典防衛相は記者会見で、「北朝鮮がさらに能力を高める可能性もある。万全の態勢を取るため、予算要求したい」と発言。長距離巡航ミサイルの導入が専守防衛に反するという懸念に対し、「我が国に侵攻する敵の水上部隊や上陸部隊に対処する。敵基地攻撃を目的としたものではなく、『専守防衛』に反するものではない」とした。

日本の迎撃率は低い

現在、日本のミサイル防衛体制は、4隻のイージス艦、34基のPAC3の"二段構え"となっている。ただ、PAC3は全国をカバーしておらず、実際は「一段構え」に過ぎない。このため政府は、イージス・アショアを早期に配備し、万全の態勢を整えようというわけだ。

「これで日本の防衛は安心」と思いたいが、イージス・アショアの運用が完了し、仮に北朝鮮が日本に100発のミサイルを発射した場合、日本が撃墜できるのは約3割と言われている。ミサイルがそれ以上発射されれば、日本の迎撃率は悪化し、多くの国民が亡くなるのは確実なのだ。

イージス・アショアを導入しても、万全の態勢が整うわけがなく、「ないよりマシ」というのが現実的なとらえ方であろう。

専守防衛の転換が必要

もちろん、多数のミサイルを完全に迎撃することは困難である。アメリカでさえできない相談だ。そのため各国は基本的に、攻撃の兆候があった場合、その攻撃ポイントを事前に破壊する「敵基地攻撃能力」を保有し、ミサイルを撃たれるリスクを減らそうとする。

そこで日本は、北朝鮮を射程に収める長距離巡航ミサイルを導入する流れになっているのだが、たとえ導入が実現しても、「撃たれない限り、反撃できない」という制約を受ける現状に変わりはない。憲法9条を改正し、極端な専守防衛の考えを転換しなければ、日本を守り切ることはできないと言える。

先の衆院選で、安倍政権は「この国を、守り抜く。」というスローガンを掲げて大勝した。だが、今回の予算措置を講じても、看板倒れになるのは目に見えている。

マスコミも、こうした政策の欠点こそ指摘し、さらなる対応を求め、国民の安全・安心につながる報道をすべきではないか。

(山本慧)

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