中学生の読解力が低下していることが、国立情報学研究所の調査で明らかになった。

教科書や新聞記事などを題材につくられた問題で、文章の構造や理解力を測った。中高生約2万人を対象に分析が行われた。

その結果、「主語がわからない」「推論や2つの文章の違いが理解できない」など、中学3年生の25%が、教科書レベルの基本的な読解力を身に付けていないことが分かった。

調査を行った同研究所の新井紀子教授は、「読解力が低く教科書が読めないと、自力で新しい知識を得ることができない。運転免許など資格も取得できず、社会生活に支障が生じる」と述べている(23日付読売新聞)。

一日の多くの時間をスマホに費やす子供たち

読解力低下の可能性の一つとして、スマホの普及について考えてみたい。

内閣府が2016年に行った「青少年のインターネット利用環境実態調査」では、中学生のスマホ所有率は51.7%で半数を超え、中学生のスマホの平均使用時間は約2時間だった。これは、睡眠時間や通学・部活動などを含めた学校での時間を除けば、一日のかなりの時間をスマホに費やしていることを示す。同調査では、睡眠不足や学校成績の低下などの弊害も浮き彫りになっている。

小論文の実験 スマホ派と読書派、どちらに軍配?

また、本誌が2017年9月号の企画「スマホに支配されない時間術」で行った小論文を書く実験では、スマホを普段から頻繁に利用するスマホ派の学生は、そうでない読書派の学生に比べて、文章力に難があった。スマホ派は誤字・脱字、論理の飛躍も多く、読書派は結論と論点が明確で、独創性のある文章を書いた。

確かに、スマホで見るインターネット上のブログやSNSの言葉や文章は省略されがちで、感覚的なものが多い。また、ラインなどの特定のコミュニティ内でのやり取りは、正確な文法や論理性がなくても通じる。

しかし、そのやり取りに慣れてしまうと、仲間以外の人に、自分の考えや思いを伝える力、相手の言葉を理解する力が衰えてしまうのではないか。

時間の使い方の集積が、あなたの人生を形づくる

一定の見識のある人物が書いた本は、編集者という文章のプロの目を通していたり、本人の信用をかけた作品でもある。日頃から、そうした質の高い本を読んでいる人と、ネット上の「つぶやき」に時間を費やしている人とは、文章などの読解力に自然と差がつくだろう。

もちろん、スマホ自体に罪はない。調べ物やさまざまな手続きの時間短縮などで、私たちの生活を豊かにしてきた面もある。

スマホの功罪は、今後もさまざまな場面で語られていくだろうが、常日頃、どんな情報に接しているか、何に時間を使っているか、という集積が、その人の人生を形づくり、未来を開く力になることは間違いない。(寛)

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