2017年9月号記事
守りたいけど
国民を守れない自衛隊トリビア20
最近、永田町では改憲論が取り沙汰されている。
話題の主役は「自衛隊」の位置付けだが、実情を理解した上で議論されているかは疑問だ。
そこで、小難しい憲法論の前に知っておきたい「自衛隊トリビア」を紹介する。
トリビアとは、雑学的な豆知識のことだが、これを知れば、国防への意識が変わるだろう。
(編集部 山本慧、山本泉)
contents
守りたいけど - 国民を守れない自衛隊トリビア20 Part.1
編集部は、自衛隊トリビアを取材し、20~70代の男女20人にアンケートを行った。
驚きの度合を「えー」とし、1人につき「0えー」から最大で「5えー」の間で評価してもらった。
ここでは、そのうちの上位20をランダムに紹介する。
No.1
戦車が壊れたら部品交換に、 数年かかる
81えー
戦争が起きれば、当然、戦車などの装備が故障したり、破損したりするケースが相次ぐ。元陸上自衛官はこう語る。
「例えば10式戦車は、今年度で6輌しか造っておらず、製造ラインが動いている期間が短いので、そもそも予備の部品が少ないんです。大きな故障をした場合、修理できない可能性が高いです」
―戦車やイージス艦が故障したら、どうなるのですか?
「最悪の場合、戦車は2~3年使えなくなり、ミサイル防衛にも穴が開きます」
No.2
海外にいる自衛隊に医薬品を届けるには、 半年かかる
91えー
海外にいる自衛隊の医療品は、日本から運搬することになっている。だが、輸送するための日本での手続きには、かなりの時間がかかる。
海上自衛隊の医官はこう語る。
「例えば、アフリカの部隊に医療品を届けるには、半年ぐらいかかります。日本にいる担当の衛生員が手続きに不慣れだと、さらに遅くなります」
―届くまではどうするのですか?
「あるもので対処するか、恥ずかしい話ですが、他国から分けてもらいます」
No.3
自衛隊の無線機は、 つながらない
91えー
無線機とは、自衛隊員が野外などで部隊同士の連絡を取るための機器である。
通信事情に詳しい元陸上自衛官はこう語る。
「はい。とてもつながりにくいです。自衛隊が政府からもらっている無線の周波数帯の質は悪く、数も少ないです。実戦はもちろん、災害派遣時ですら厳しい状況にあり、携帯電話を多用しているのは事実です」
―他国も同じ問題を抱えていますか?
「いいえ。他の国では考えられません。ちなみに、米軍は政府から非常に良い周波数帯をもらっています」
No.4
72えー
イラクに派遣された自衛隊は、オーストラリア軍に 守られていた
憲法9条第2項の規定で、日本は自ら、戦争を行う権利「交戦権」を拒否している。
そのため、2003年~09年に行われたイラク派遣では、武器使用が厳しく制限されている自衛隊は、オーストラリア軍に守られていた。オーストラリア軍が暴徒から攻撃されたことがあったが、自衛隊は傍観せざるを得なかった。
その後、同国から「国際活動に参加できる組織ではない」「ともに活動する相手として信頼できない」と酷評され、日本の国際評価は下がった。
No.5
自衛隊が塹壕を掘るのに、 地主の許可が要る
81えー
現行法では、自衛隊が敵の攻撃から自分の身を守るための塹壕を掘る際には、事前に地主の許可を得なければならない。
しかし、戦争が起きれば、地主は避難したり、亡くなったりして、許可を得ることは極めて難しい。自衛隊が自由に動き回れるのは、演習場の中だけということだ。
写真:陸上自衛隊HP
護衛艦「いずも」はヘリを14機搭載できる「事実上の空母」だが、ヘリがない
自衛隊は海外にいる日本人を、救出できない
不審船に突入しようとした隊員の身を守ったのは、「少年マガジン」だった など