《本記事のポイント》
- DARPAでは、昆虫型や超超音速ステルス、自律型ドローンの開発が進む
- 人工知能の開発に向け、人間と機械を融合するような技術の開発も進んでいる
- 科学の進歩と精神性の向上は両輪
コンピューターやインターネット、GPSにドローン――。これらは、米国防高等研究計画局(DARPA)から生み出された技術の数々だ。
前編( http://the-liberty.com/article.php?item_id=13117 )では、これまでDARPAが生み出してきた技術を紹介した。DARPAの技術は、民間にも転用され、それによって私たちの生活はより便利になり、近代化されてきた。今後もそうなる可能性は高いだろう。
DARPAの研究は今、どこまで進んでいるのか。そして未来はどうなっていくのだろうか。
戦争を主導するのは「ドローン」になる
米国防総省の報告書「無人システム統合ロードマップ」によると、今後25年間、戦争を主導するのは「ドローン」だ。
ドローンとは、無人航空機のこと。基本的に無線で操縦する。現在もドローンはさまざまな場所で軍務を果たしている。将来的には、深海から宇宙空間でも、ドローン軍隊による偵察や攻撃が可能になるとされている。
DARPAは、昆虫型ドローンも開発している。2007年9月、米ホワイトハウス近辺の広場で開かれたイラク反戦集会で、大きなトンボのようなものが複数の人に目撃された。
ワシントン・ポスト紙(2007年10月9日付)は、「トンボか? 昆虫スパイか? ロボ昆虫を開発する科学者たち」という記事を掲載し、「昆虫のようなドローンをハイテクの監視ツールだと疑う者もいれば、トンボ――生き物にしてはロボット的だと、生物学者さえ認める古生物――だと言う者もいた」と報じた。ちなみに最新鋭の昆虫ロボットは、蚊型だといわれている。
さらにDARPAが開発中の超超音速ステルス・ドローン「HTV-2」は、高高度を音速の20倍の速さで飛ぶことができる。DARPAによると「ニューヨークとロサンゼルス間を12分足らずで移動できる」という。このドローンなら、世界中のどんな場所にも、1時間以内に到達できる。
また、DARPAは「自律式無線ドローン」の開発も進めている。自律式とは、外部のコントロールを受けずに、あらかじめ与えられた命令に従って、自ら動くということ。例えば、一つのドローンが破壊された場合でも、他の場所にいたドローンがそれを察知し、自ら動くことができる。
DARPAは自律型ロボットの開発を目指しているが、それには、人工知能(AI)が不可欠だ。現在のところ、自律型ロボットをつくれるほどには、AIの開発は進んでいない。
人間と機械を融合する!?
AIの進歩に重要な役割を果たすのは、神経科学とコンピューターの開発だ。
これまでDARPAは、脳に損傷を受けた兵士を治療するため、数十年かけて脳科学研究を推進してきた。近年、DARPAが最も力を入れているのは、人間と機械を融合するようなニューテクノロジーだという。
例えば、記憶喪失者の記憶を回復させるため、ワイヤレスの埋め込み型「神経機能代替装置」を開発し、試験中だ。他にも、精神疾患の兵士には、脳のさまざまな領域に複数の電極やマイクロチップを埋め込み、ストレス障害を治療しようとしている。
そして2015年、DARPAは大脳にチップを埋め込んだ全身麻痺の女性が、自らの思考によって、ロボットアームを操作したり、シミュレーション上でステルス戦闘機「F-35」の操縦ができるようになったと発表した。
「AIが人間を支配する世界」にしないために
DARPAの研究だけを見ていると、人間と機械の融合もそう遠くない未来に実現しそうに思える。映画「ターミネーター」のように、「AIが人間を支配する世界」が到来するのではないかという恐れも感じる。
科学技術の進歩は歓迎すべきものだ。だがそれに伴い、人間も精神性を高めていく必要がある。「神仏は存在し、人間は何度も生まれ変わりながら、心を磨いている霊的な存在だ」という正しい宗教観が、人類を滅ぼすような方向で科学を悪用することを防ぐはずだ。AIの進歩を、人間がより人間らしい生活をすることにつなげる努力が必要だ。
(山本泉)
(参考書籍:アニー・ジェイコブセン著『ペンタゴンの頭脳』)
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