即席爆弾装置(IED)の探索ロボット「タロン」。

《本記事のポイント》

  • DARPAの軍事技術は、さまざまな形で民間転用されてきた
  • ベトナム戦争やイラク戦争を通して、DARPAは最先端の技術を開発した
  • 日本にも、DARPAのような軍事研究機関が必要

コンピューターやインターネット、GPSに、ドローン――。これらは、米国防高等研究計画局(DARPA)から生み出された技術の数々だ。

国防総省の軍事科学機関のDARPAは、1958年の創設以来、数多くの革新的な軍事技術を生んできた。年間予算は約30億ドル。局内のプログラム・マネージャーが、学者などに研究を委託し、その研究成果を、軍や政府機関に引き渡すスタイルを取っている。年平均で約120人のマネージャーが約5年の任期で雇用され、一流の学者が研究に勤しんでいる。

センサーやGPS、ドローンまでも

DARPAの評価を一躍高めたのは、1955年に起きたベトナム戦争だ。この戦争で次々と新しい技術を生むことになる。

例えば、敵の戦闘員の位置を感知する「センサー」や、夜でも敵の様子が見える「暗視技術」。敵のレーダーにも感知されない「ステルス機」や、「コンピューター技術」と「そのネットワーク構築」の開発も進められた。

さらに、ジープ車両などから照射されるレーザービームで誘導する「誘導兵器」や、敵地の偵察・観測を行う「ドローン」、衛星を利用したナビゲーション技術の「GPS」、「バーチャル空間での軍事演習」なども、ベトナム戦争時代に開発された。

こうした技術は、今や民間でも利用されているが、アメリカは、圧倒的な技術力を確立したことで、イラクとの湾岸戦争(1991年)を、たった1年と2日で収束させる。

イラク戦争には、次世代ロボットや鳥のような小型機も開発

DARPAによる技術開発は、それだけにとどまらない。

イラク戦争(2003~2011年)における、有志連合軍の死因の約6割は、たった25ドルでつくれる即席爆弾装置(IED)だった。爆弾は、処理しても処理してもきりがなく、爆弾処理班は神経をすり減らしながら、命がけで任務にあたった。

そのためDARPAは、IEDを探索するロボット「タロン」(写真)を開発する。これは、遠隔操作式の45キログラムに満たない小型ロボットであり、備え付けのロボットアームで爆弾などを取り上げ、検査できるシロモノだ。

アフガニスタンやイラクにそれぞれ投入され、現場では、タロンに惜しみない称賛が送られ、人間に似た名前まで付けられたという。ちなみに一体あたりの費用は、6~18万ドルだ。

また、イラク戦争が始まった2年後、DARPAは戦闘地帯で群衆の中に隠れるテロリストなどを見つけるため、建物内を含めた街の様子を監視する「戦闘地域監視プログラム」を開始した。

鳥ほどの大きさである「小型無人機」を開発して、街や人々の様子を空撮。その機密データをまとめたウィキペディアのような「メディア・プラットフォーム」をつくり、関係者が閲覧できるようにした。

日本でも軍事研究を行える環境を

その一方で、DARPAの研究に批判が起きたこともある。

2001年の「9.11テロ」の後、DARPAは、テロリスト情報を事前に探知すべく、「全情報認知」システムを構築する計画を立てた。クレジットカードや雇用、医療情報などのあらゆる個人情報を蓄積するシステムであったため、国民から大反発を呼び、即時廃止となったのだ。

ただ、こうしたことがあっても、アメリカではDARPAそのものを廃止する動きには発展しない。軍事技術の必要性が国民全体で共有されているためだ。

その点、日本では今年4月に、日本学術会議が「科学者は軍事的な研究を行わない」とする声明を発表し、軍事技術そのものを否定する機運が起きた。北朝鮮や中国が軍拡を進めている状況を見れば、国民の命を軽視する判断である。

日本も国を守るために、DARPAのような新しい研究に人材や予算を投じ、防衛力強化に努める必要がある。(続く)

(山本泉)

(参考書籍:アニー・ジェイコブセン著『ペンタゴンの頭脳』)

【関連書籍】

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